瀬戸内しまなみ海道
瀬戸内しまなみ海道(愛媛県今治市~広島県尾道市)沿線で、代表的な観光資産が相次いで国の「日本遺産」に認定され、活気づいている。30日から始まるウォークイベント「第16回瀬戸内しまなみ海道スリーデーマーチ」(第一生命など協賛)でも今年は認定記念コースが設けられた。
しまなみスリーデーマーチ、開幕告げる旗
瀬戸内海に浮かぶ周囲約850メートルの無人島・能島(今治市)。戦国時代、瀬戸内海の覇権を握った村上水軍の3家のうち能島村上氏の居城跡がある場所だ。
22日昼、約40人の観光客が船で到着した。島で金ぱくの張られた化粧箱や茶道具などが出土したことから、ガイドが「海賊のイメージとかけ離れた文化的な生活が営まれていた」と紹介。広島県竹原市の会社員新井雅之さん(41)は「イメージと違い、組織化されていたとは意外。日本遺産にもなったし、もっと目立つ観光地になるのでは」と話した。
能島を含む海道一帯は今年4月、「“日本最大の海賊”の本拠地:芸予諸島―よみがえる村上海賊“Murakami KAIZOKU”の記憶―」として日本遺産に認定された。
2年前まで能島には年数回しか渡れなかったが、2014年に旅行会社「瀬戸内しまなみリーディング」(今治市)が上陸ツアーを開始。これまでに約7千人が渡った。日本遺産認定後は昨年同時期(5月末~7月)に比べて1割ほど増えた。担当者は「日本遺産に認定されたインパクトを感じる」と話す。
「レモンの島」として知られる生口島(尾道市)。今月11日、この島で初めてのトライアスロン大会があった。約500人がスイム、バイク、ランの計55・5キロで競い、沿道では地元高校生ら300人以上が、声援を送って選手を後押しした。トライアスロン初挑戦という京都市の真伏(まぶし)美和さん(28)は、4時間余りでゴール。「景色がすてき。この一帯が『日本遺産』ですよね」と笑顔を見せた。
尾道市では昨年、「海の川」と称される尾道水道一帯が「尾道水道が紡いだ中世からの箱庭的都市」として日本遺産になった。
文化庁が日本遺産を認定する目的の一つが外国人観光客への発信。その外国人観光客に人気が高まりつつあるのが、海道でのサイクリングだ。14年には高速道路を通行止めにした国際大会も開催。「世界の7大サイクリングコース」の一つとして、外国メディアにも紹介された。
今治市でレンタサイクルを利用した外国人は14年度の約2300人から15年度は6割増の約3700人。10月30日には2年ぶりに国際サイクリング大会が開催される。国内外の約3500人が参加する予定で、今治市の担当者は「日本遺産を機に外国の方へモデルコースを推奨するなど、働きかけを強めたい」と話す。
第16回瀬戸内しまなみ海道スリーデーマーチは9月30日~10月2日で当日参加もできる。問い合わせは今治市役所内の事務局(0898・36・1515)。(直井政夫、北村哲朗)
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〈日本遺産〉 日本文化を海外に発信する「クールジャパン」の一環として文化庁が2015年度に設けた。有形・無形の文化財を織り込み、地域の歴史や文化の特色を分かりやすく表現する「ストーリー」を認定。これまで全国計37件が認定され、20年度までに約100件に増やす予定。