2010年に経営破綻(はたん)した日本振興銀行の処理をめぐり、同行の資産を引き継いだ整理回収機構が、木村剛元会長に50億円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁(大竹昭彦裁判長)は29日、約37億6千万円の支払いを命じる判決を言い渡した。木村元会長が取締役としての注意義務を怠ったと認めた。
判決によると、同行は破綻前の08年10~11月に、商工ローン大手「SFCG」(破綻)から債権を買い取ることを取締役会で決議した。判決は、買い取った債権の安全性について「確認が十分取られておらず、SFCGの経営状況も極めて危険な状態で、木村元会長もそれを認識していた」と指摘。SFCGから回収できなくなった約28億円と、利息制限法の上限を上回るためにもともと支払う必要がなかった約9億5千万円について、木村元会長に賠償責任があると認めた。
機構側は、木村元会長が元妻や弟にした財産贈与などが「民事上の責任逃れだ」とも訴えていた。判決は、機構側の主張をおおむね認めて財産贈与などの契約を取り消し、計約3億5千万円を機構に支払うよう元妻と弟に命じた。
同機構は「元取締役の責任を認めた点などは高く評価できるが、損害の認定で請求の一部が認められなかったことについては対応を検討したい」とコメントした。