覚醒剤約11キロを密輸したとして、覚醒剤取締法違反(営利目的輸入)などの罪に問われた男の裁判で、日本とタイの捜査当局が連携した「泳がせ捜査」の手法が違法かどうかが争点になり、東京地裁(稗田雅洋裁判長)は3日、捜査を合法と認めたうえ、押収した覚醒剤を証拠採用した。判決は10日に言い渡される。
元暴力団組員の片山徳男被告(69)は、2014年4月に自分の妻とその友人らを運び屋として、営利目的で密輸したなどとして起訴された。
タイ警察は、捜査協力者から密輸情報を知り、日本側と「コントロールド・デリバリー(CD=泳がせ捜査)」を実施。途中で覚醒剤を押収したが、日本から運び屋が来ると、私服捜査員がホテルの部屋まで覚醒剤を届けた。警視庁は、日本に持ち込んだ直後の羽田空港の駐車場で運び屋を、約半年後に片山被告をそれぞれ逮捕した。
弁護側は「覚醒剤を押収した時点で密輸は失敗しており、捜査機関が別の犯罪を作り出した」と主張。違法に集めた証拠だと訴えていた。検察側は「日本でもCDで警察官が配送業者になって荷物を届けることがある」と述べ、捜査は適法だと主張していた。
稗田裁判長は「各国の捜査機関がどのような捜査手法を採るかは各国の法制度により異なる」と指摘。タイ警察が現地の法律で定める許可証を得て捜査しており、日本側の捜査も含めて「手続きに何ら違法はない」と結論づけた。(志村英司)