裁判員を務めた感想を手話で述べる柴田正明さん=東京・霞が関(代表撮影)
東京地裁で開かれた傷害致死事件の裁判で、聴覚障害のある男性が裁判員を務めた。同地裁の裁判員裁判で手話通訳がついたのは初めて。男性は6日の判決後に記者会見し、「不安はあったが、参加できてうれしかった」と述べた。
裁判員を務めたのは、会社員の柴田正明さん(45)。証言台の隣に手話通訳が立ち、3人が20分ごとに交代して通訳した。柴田さんは通訳と被告の表情などを見ながら審理に加わった。
2015年に東京都杉並区のマンションで、当時1歳2カ月の長女を強く揺さぶり死なせたとして、父親でオーストラリア国籍の無職バロウズ・リチャード・アラン被告(37)が傷害致死罪に問われた裁判。石井俊和裁判長は、懲役4年(求刑懲役7年)の判決を言い渡した。被告には英語の法廷通訳がついた。
柴田さんは、1日にあった被告人質問で、「子どもが泣いたとき、世話が嫌だなと思うことはありましたか」と手話で尋ねた。判決後、柴田さんは「いろいろな所を見ないといけない難しさはあった。専門用語が難しかったが、裁判長の丁寧な説明で理解できた」と振り返った。
最高裁によると、昨年末までに裁判員に手話通訳が付いたのは全国で8件あるという。