ハンガリーで2日、欧州連合(EU)が決めた加盟国による難民受け入れ分担の是非を問う国民投票が行われた。政府が主張する「受け入れ反対」が有効投票の98%と圧倒的多数を占めたものの、投票率は43・35%と低調で法的に不成立となった。ただ、オルバン首相は「EUは民主的な投票の結果を尊重しなければならない」と強気な姿勢を崩していない。
ハンガリー国民投票低調、不成立 難民分担、反対は多数
オルバン氏は同日夜、投票結果を受けて支持者の前で演説。圧倒的多数が反対票を投じたことを「偉大な勝利だ」とたたえた。
投票率についてオルバン氏は、約29%と低迷した2014年欧州議会選の投票率を引き合いに出し、「15%も上回ったことはブリュッセル(EU本部)に対する強い武器になる」と強調。投票で示された国民の意思を反映させるため、近く憲法改正に着手することも表明した。
ただ、国民投票を「政権の人気浮揚策」と批判し棄権を訴えてきた野党も「勝利」を強調。野党第1党社会党のモルナル・ジュラ党首は記者会見で「国民は投票を控えることによって、オルバン氏への不信任を表明した」と話した。
議会第3党で、難民受け入れ反対や反移民政策でオルバン政権と協調する極右政党「ヨッビク」のボナ・ガボール党首も「成立しなかった国民投票はブリュッセルに対して何の意味も持たない」と批判。「これはオルバン氏個人の失敗だ」と話した。
国民投票でEUの決定を覆すことはできないが、オルバン氏は投票によって受け入れ拒否を国民の総意として示すよう訴えてきた。
EUは昨年9月の首脳会議で、加盟国がギリシャ、イタリアから難民16万人を分担して受け入れることを決めたが、東欧のハンガリーとスロバキア、チェコ、ルーマニアは反対。ハンガリーとスロバキアは決定の無効を求めて欧州司法裁判所に提訴した。(ブダペスト=喜田尚)