海をデザインに生かした完成間近の「ラスカ熱海」。新幹線(左奥)が水上を滑るかのように走る=4日、熱海市
大正14(1925)年の開業以来、90年余の歴史を刻んできたJR熱海駅。その駅ビルが建て替えられ、「ラスカ熱海」として来月25日にオープンする。長年温泉都市の代名詞となり、昭和の香りを色濃く残していた熱海の玄関口が、モダンな装いになる。新駅ビルの周辺を歩きながら今昔をたどってみた。
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「未来に広がる海」。9月下旬、JR東日本東京工事事務所・駅改良グループリーダーの秦文仁(はたふみひと)さんは、新駅ビルの前でデザインコンセプトをそう説明した。
3階建てで高さ約15メートル、東西約140メートル、奥行き約20メートルの深い海の色を思わせるラスカ熱海。建築を請け負った大成建設の横浜支店によると、2014年11月の着工以来、資材置き場も少ない中で利用者がいない深夜などに工事を続けてきたという。「都内の駅ビル建設より、乗り越えるべき条件が多かった」と現場代理人の川守田崇彰(かわもりたたかあき)さん。
運営を担う湘南ステーションビルによると、駅ビルは昭和26(1951)年に「熱海駅デパート」として開業。運営母体の変遷も経て06年に「熱海ラスカ」と名称変更した。3階建ての1、2階におみやげ屋など20余店舗が営業していたが、老朽化と耐震性などの観点から2010年3月末に閉店した。
マルシェ「伊豆・村の駅」を始め熱海・伊豆エリアの名産品を扱う店やレストランやスーパー「成城石井」、屋上部のバーベキューなど計36店舗が入る。湘南ステーションビルは「JR小田原駅のラスカのほぼ3分の1の規模」という。15年度の駅別1日平均利用者数は熱海の9842人に対し小田原駅は3万4183人と3倍強。売り場面積も熱海の約3倍で6400平方メートル。売り上げは15年度実績が90億円強だった。
単純計算だと熱海は30億円ほどの売り上げになりそうだが、小田原より観光客の割合が高く、それ以上になる可能性も十分ある。斉藤栄市長は「新駅ビルの経済効果には期するところ大だ」。駅周辺を離れたところにも人の流れをどう循環させていくかが、行政などの今後の課題となる。