ワコールがJR京都駅前に開いた会員制の図書室=京都市
肌着や子供服のメーカーが公開講座や図書室といった「学びの場」を設けている。商品そのものを売り込むのではなく、ブランドのイメージを高めてファンを増やし、売り上げ増を図る。消費者の固い財布のひもを緩める新たな手だてだ。
■テーマは「美」会員制図書室
下着大手のワコール(京都市)は6日、JR京都駅前に新しく建てた自社ビルに、会員制の図書室や会議室を開く。美をテーマにした有料講座も開き、ファッションに敏感な人たちに集ってもらおうとしている。
図書室は約100平方メートルの広さで、「ファッションの来歴」「美の在り方」などのテーマごとに、哲学書や美学書、写真集、ファッション誌などを集めた。
1950年に1年だけ刊行され、質の高さで伝説ともなった米ファッション誌「Flair」など貴重な蔵書も多いが、すべて手に取れるようになっているのが特徴だ。今のところ約3千冊を所蔵し、今後5年で約8千冊に増やす予定だ。日曜、月曜、祝日は休み。会費は訪れた当日のみ利用できる1日会員の場合、税込みで1620円(ワンドリンクつき)だ。
会議室で定期的に開く有料講座は、ファッションや俳句、デザインなど様々で、内容によって数百円から数千円程度だ。半年間で約1200人の利用を見込む。オープン前日の5日に開いた「プレ講座」では、ブックディレクターの幅允孝(はばよしたか)さんが本とのつきあい方などを語り、11人の参加者は熱心に聴き入った。
ワコール広報・宣伝部の猪熊敏博部長は「下着以外の取り組みを通じてワコールを好きになってもらえれば、将来的に下着の販売にもつながるはずだ」と期待する。
人口減少で国内では下着の需要が減ることを見据え、ワコールは自社店舗やインターネットでの直接販売に力を入れている。店舗以外にも消費者と接点をつくることで、下着を買うときにワコールを選んでもらいたいという考えだ。