第一声を上げる吉井利光氏=東京都豊島区の池袋駅東口
11日告示された衆院東京10区補選(豊島区、練馬区の一部)は、与野党の候補がぶつかり合う構図となった。「年明け解散」の臆測が広がるなか、2020年東京五輪・パラリンピックを見すえた首都のまちづくりや経済政策などをめぐり、12日間の選挙戦が繰り広げられる。
元NHK記者で、民進新顔の鈴木庸介氏(40)はJR大塚駅前で第一声をあげた。「めざすのは誰にも居場所のある社会。一人ひとりの生活、人生を大切にするために国の仕組みを変えねばならない」と訴えた。
今月5日、共産が公認候補を取り下げ、野党4党の統一候補となった。安倍政権への批判票の受け皿になることをめざす。
NHKを退職した後、欧米の大学院で学んだという経験から、外国人向けシェアハウスや外国語が学べるバーなどを経営してきた。多様性のある活気あふれるまちづくりを政策に掲げ、「生まれも育ちも豊島区」と地元密着の姿勢を前面に打ち出す。
自民の前衆院議員(比例東京)で弁護士の若狭勝氏(59)=公明推薦=は、JR池袋駅西口で集会を開いた。応援に駆けつけた小池百合子都知事の選挙戦でのイメージカラーを引き合いに「グリーンの力でクリーンな政治をめざす。知事が取り組む都政の透明化、情報公開は国政においても通じる」と声を上げた。
元東京地検公安部長で、テレビ番組のコメンテーターとしても活動。小池氏の地盤を引き継いで連携を強調し、「国と東京の橋渡しをしていきたい。東京五輪ではテロ対策にも力をいれたい」などと訴えている。出陣式には、自民の二階俊博、公明の井上義久両幹事長らも出席した。
幸福実現党員で新顔の吉井利光氏(34)は、釈量子党首らとJR池袋駅東口で演説した。「元気な日本経済を取り戻すために、消費税を5%に戻すことを『いの一番』にやるべきだ」などと訴えた。
■「暮らしに目を向けて」
有権者はどんな思いを託すのか。
JR大塚駅前で候補者の第一声を聞いた主婦石井道子さん(79)は60年ほど豊島区で暮らしている。駅前の再開発が進む一方、高齢化が進んでいると感じる場所もあり、若者のパワーで地元の活性化を願う。「多様性のある社会は魅力的。いろいろな人が暮らしやすい社会を作ってもらえば、またにぎやかな地域になるはず」
主婦の秋谷一枝さん(73)=豊島区=は、消費税増税や物価の上昇で年金暮らしが一層苦しくなったという。ニュースで景気が良くなったと聞いても、自分の子どもや孫世代が働きやすくなった実感はない。「国民の暮らしに逆行する政治ではなく、私たちの暮らしにこそ目を向けてほしい」と述べ、野党共闘に期待する。
同じく年金暮らしの鏑木(かぶらき)治子さん(78)=豊島区=は、池袋駅西口に足を運んだ。「近年は高齢者問題に力を入れすぎるべきではないと言う人もいるが、いずれはみんな年をとる。国政では介護や年金の対応をしっかりやってほしい」。高齢者問題への考え方を聞きたいと思っている。選挙期間中に他の候補者の演説も聞き、投票先を考えるつもりだ。(力丸祥子、佐藤恵子)