戦後の復興期、広島市民のカープに寄せる思いが描かれている=「広島カープ誕生物語」(DINO BOX発行、垣内出版発売)から
「はだしのゲン」の作者として知られる中沢啓治さん(1939~2012)は、生粋の広島カープファンだった。最後の書き下ろし作品となったのが、94年に発行された「広島カープ誕生物語」。25年ぶりの優勝に、妻ミサヨさん(73)は「生きていたらどんなに喜んだことだろう」と目を細める。広島は、日本シリーズ進出をかけて、12日からのクライマックスシリーズ(CS)最終ステージでDeNAと対戦する。
特集:カープ25年ぶりV
リーグ優勝した9月10日、ミサヨさんは広島市の自宅で、テレビ中継で試合を見守った。優勝が決まると、「やったよ! お父さん!」。思わず口に出た。「主人は原爆投下後の焼け野原にカープができた時からファン。生きている間にもう一度見たいという願いはかなわずに残念だけど、きっと喜んでいると思います」
カープ誕生物語は、49年の誕生から75年の初優勝までを、熱狂的ファンで原爆孤児の主人公らの目線を通して描いた作品だ。《広島カープは わしらの 希望の星じゃ》 市民らのカープに寄せる思いが、セリフから伝わってくる。
「主人がカープ、カープ言うも…