無料の塾に来た約20人の児童や生徒は、ボランティアの講師に教わりながら問題集を解いたり授業の予習をしたりしていた=9月、兵庫県西宮市、石原孝撮影
経済的に厳しい家庭の子どもたちを対象にした学習支援の動きが広がっている。親の収入が低いと塾や習い事の出費が少なくなる傾向があるといい、各地の支援団体が「教育格差」の解消を目指して工夫を凝らしている。
兵庫県西宮市の市大学交流センターの一室で9月24日夜、約20人の中学生らが教科書や問題集を広げていた。NPO法人「阪神つばめ学習会」が週2回開講している無料塾。清少納言の「枕草子」の暗唱や授業の宿題、英単語カード作りと、一人ひとりで勉強内容は違う。
「この英文にhave to(~しなければならない)を加えてみて」「2x+8xは何になる?」。大学生や元塾講師、翻訳家らのボランティアが集中を切らさないように生徒に声をかけていく。難しい問題があれば解き方のコツを教え、学習時間の2時間はあっという間に過ぎた。
阪神つばめ学習会は同会理事長で会社経営の庄司知泰(ともひろ)さん(37)が「親の収入格差が子どもの学力格差になるのはフェアじゃない」との思いで昨年8月から始めた。現在は母子家庭や不登校経験のある中学生ら約25人が参加。今春には神戸市内にも無料塾を開いた。教室は利用料が無料か格安の市の施設などを使い、講師は知り合いやインターネットなどを通じて集まったという。
高校受験を控えた中学3年の男子生徒(14)は「普通の塾に通って親に金銭的な負担をかけたくない」と週に2回通う。
庄司さんは「同じ思いを持った人と活動を広げ、いつかは自分たちのような無料塾がなくなるのが目標」と話した。