「こどもの里」の夕方。広間では、中学生たちが取り合うように赤ん坊を抱っこしていた=大阪市西成区、細川卓撮影
■小さないのち 奪われる未来
特集「小さないのち」
SOSを発した子どもを救いきれない社会、孤立の中での妊娠や育児――。取材を通じ、児童虐待に共通する課題が見えてきた。その「芽」を未然に摘み、子どもたちを守ろうと地道に取り組む人たちがいる。
「子どもが転んで打ったと親が言うんですが、どう思いますか?」。四国こどもとおとなの医療センター(香川県善通寺市)に昨年、自治体から相談があった。育児支援対策室長の木下あゆみ医師(42)は写真を見て、「転んだにしてはあざの数が多く不自然。早急に児相(児童相談所)に連絡して打ち合わせた方がいいと思います」と伝えた。
センターは産科や児童精神科、障害児病棟などを備えた四国全体の周産期・小児医療の拠点病院。未婚や10代の妊婦、健診回数が少ない妊婦、ひとり親家庭や親の健康に問題があるなど、不安を抱えることが多い受診者を支える取り組みを長く続ける。育児支援外来では悩み相談にも応じ、子の発育に不安を抱えている親の悩みを聞いたり、「産後うつ」のケアをしたりする。
30代の母親は、先天性の心疾患があった娘の成長が遅いことに悩み、ミルクを無理やり飲ませようとするなど「虐待と紙一重だった」。だが、木下医師が自分を否定せず、温かい言葉をかけ続けてくれたことで「2人目が欲しいと思えるようになった」という。
特徴的なのは、気になる親子の…