「恋人の聖地」としてイメージ向上を図る現在の三段壁=和歌山県白浜町、森本大貴撮影
自殺対策に悩み続けてきた景勝地が、そのイメージをぬぐい去り、地元で自ら命を絶つ人を減らす試みを進めている。ただ、自殺そのものを減らすことにつながるのだろうかと、支援者らは不安も募らせている。
〈重大な決断をするまえに一度是非ご相談下さい〉
和歌山県白浜町の名勝「三段壁(さんだんべき)」で今年9月、高さ約50メートルのがけから、こんな文章の看板1枚が撤去された。相談先として白浜バプテストキリスト教会の電話番号が記された看板5枚のうち、海に最も近い1枚だ。町が教会と話し合い、目立たない裏道に移した。
県警白浜署によると近年、周辺で身投げしたとみられる遺体の数は2008年の21人が最多で、毎年10人前後に上る。防止用の柵を作り、監視カメラやライトも設置してきたが、町民生課は「ハード面はやり尽くした」と漏らす。そこで考えたのが、恋人が集うスポットへの変身だった。
昨年夏にデート向きの観光地を示した案内地図「白浜恋物語」を作った。今年4月にはNPO法人「地域活性化支援センター」(静岡市)から、プロポーズにふさわしい場所として「恋人の聖地」に選定された。町はさらにハート形モニュメントの設置やイベント開催などを計画している。
■看板撤去に賛否
地元町内会長の川口雅章さん(49)は「『ここは自殺の名所』と触れ回るようなものはなくすべきだ。生まれ育った三段を自殺場所に選んで欲しくない」と町の取り組みを歓迎する。
ただ、看板を見て保護された人…