新たな産業革命をにらんだ各国の動き
「サークル、A(難度)」「シュテクリB、B(難度)」――。
10月、東京・お台場で開かれた国際体操連盟の総会で、日本体育大学の選手が繰り出すあん馬の技の名称と難度が、次々と巨大スクリーンに映し出された。富士通と日本体操協会が2020年東京五輪での採用を目指す「人工知能(AI)審判」のお披露目だった。
体操競技では、リオ五輪の日本代表、白井健三選手(日体大)の名がついた「シライ」のように、回転が速く、人間の目では捉えにくい新技が増えている。そこで、センサーで選手の動きをとらえ、膨大な数の技をあらかじめ学習させたAIに、技の種類や難易度を瞬時に判別してもらおう、というわけだ。演技中に手や足が先までピンと美しく伸びているかなども数値化し、人間の審判の判断を助ける。18年度中に男女全種目の技をAIに覚え込ませ、実証実験を始める予定だ。
新技術を生かす試みは、小売業界にも広がる。
ファッションビル大手のパルコは、あらゆるモノがネットにつながるIoTの活用に力を入れる。昨年、本格導入したスマートフォン用アプリ「ポケットパルコ」で、利用者の居場所や購買行動を把握。浦和パルコ(さいたま市)が昨秋、過去3カ月間に自店から5キロ以内でアプリを使った顧客に絞ってキャンペーン情報を送ると、来店者数が前の週より15%も増えた。
さらに、パルコ全店で、1万円の買い物をすると500円分の優待券がもらえるキャンペーン中、1万円未満の買い物をした顧客に優待券についてアプリですぐに知らせると、約半数が平均1時間以内に次の買い物をしたという。パルコの林直孝執行役は「予想を上回る反応。IoTを活用して客と接点を増やすことが、来店や購買を左右する時代だ」と話す。
ものづくりの現場には、日本企業が得意としてきた「カイゼン」を上回る効率化をもたらす。
オムロン草津工場(滋賀県草津市)の生産ラインでは、ずらりと並ぶ白い箱形の機械の中で、ロボットの腕がミリ単位の電子部品を高速で拾い、緑色の基板に貼り付けていく。制御装置など4千種類以上を顧客のオーダーメイドで生産しており、9割以上の製品が月産20台以下という多品種少量生産だ。
部品の交換方法を工夫するなど…