事件現場の寝室(手前)=船橋市
高齢化が進む中、介護される人もする人も、ともに高齢者という「老老介護」が社会問題となっている。介護する家族が精神的に追い詰められ、事件になるケースも後を絶たない。重くのしかかる介護の負担、将来への不安……。専門家は「一人で悩まず、身近な人や専門の窓口に相談してほしい」と呼びかける。
事件は7月31日深夜に起きた。千葉県船橋市の男性(80)は、自宅2階で寝ていた妻(当時73)の首にタオルを巻き、絞めた。男性はおいを通じて110番通報。だが翌日、妻は搬送先の病院で亡くなった。
男性は殺人罪に問われ、千葉地裁の裁判員裁判で今月22日、懲役3年執行猶予5年の有罪判決を受けた。
判決によると、2人は1966年5月に結婚。夫婦でクリーニング業を営んでいた。妻に異変が起きたのは約8年前。物忘れが目立つようになり、2011年7月にアルツハイマー型認知症と診断された。13年に要介護1、今年5月には要介護2の認定を受けた。
生活全般での介護が必要になった妻を、男性はほぼ1人で介護した。「夫の役目。当然だと思った」。弁護側の被告人質問で男性はそう話した。妻は失禁を繰り返し、火の不始末を注意されると食ってかかった。意思疎通も難しい状態。それでも「愛情と責任感を持って世話していた」。男性について、判決はそう認定した。ところが――。
7月31日の夕食後、2階の寝…