記者会見で険しい表情を見せる電通の石井直社長=28日午後7時40分、東京都中央区、長島一浩撮影
新入社員の過労自殺をきっかけに、広告大手の電通が書類送検された。新入社員の労災認定からわずか3カ月。「働き方改革」を目玉政策に位置づける安倍政権のもとで進んだ異例のスピード捜査が、石井直(ただし)社長を引責辞任に追い込んだ。
電通社長、来年1月に辞任 過労自殺「深く責任感じる」
「前途ある社員が亡くなるという悲しい事態が発生した。心よりおわび申し上げます」
電通の石井直社長は28日、都内で開いた記者会見の冒頭で陳謝し、深々と頭を下げた。
石井氏は会見で、高橋まつりさんの命日の25日に遺族を弔問して直接謝罪したことを明かした。「この数日間」で辞任を意識し、「謝罪ができたこと、きょう送検があったことで決意した」と述べた。
会見に同席した中本祥一副社長は、過労自殺に追い込まれた新入社員の高橋さんについて、昨年10~12月に業務時間が急激に増えたことなどを説明。深夜や未明にメールで繰り返し業務を指示するなど、「パワハラとの指摘も否定できない、行きすぎた指導を確認した」と明らかにした。
こうした実態について、石井氏は「120%の結果を求め、仕事を断らない矜持(きょうじ)があったと思う。すべてが過剰だった」とし、「歯止めをかけられなかったことに責任がある」と認めざるを得なかった。
石井氏は2011年4月に社長に就任。労働基準法違反で本支社が相次いで是正勧告を受け、15年4月から違法な長時間労働をゼロにする目標を掲げた。しかし、業務量を減らす対策が遅れ、実際には様々な部署で労働時間の過少申告が相次いでいた。電通では1991年にも若手社員が過労自殺。責任を認めて再発防止を誓ったが、石井氏の社長就任後も労働環境の改善は果たせなかった。
■捜査急展開「政権の影響」
石井氏を引責辞任に追い込んだ…