ベトナムでの生活や両陛下の訪問などについて話す元残留日本兵の杉原剛さん=大阪市
ベトナムに到着した天皇、皇后両陛下は1日、ハノイで歓迎行事に出席し、2日には、終戦後も日本に帰らず、ベトナムの独立戦争に関わった「残留日本兵」のベトナム人家族と対面する。元残留日本兵の一人で、日本ベトナム友好協会顧問を務める杉原剛さん(95)=大阪市城東区=は「ベトナムの歴史を知ってもらういい機会。本当の友好交流が深まれば」と話している。
両陛下がベトナム到着 残留日本兵の家族らと懇談へ
杉原さんは1945年、中国の海南島で敗戦を知り、食糧調達のため船でベトナムに行く途中、台風に遭い、ベトナム北部ナムディンに流れ着いた。そこで軍の知識を乞われ、ベトナム再統治を企てるフランスに抵抗する民族統一戦線「ベトナム独立同盟」(ベトミン)に協力することになった。
生き抜くために、「仕方がなかった」。その一方で「ベトナムの人たちの新しい国づくりへの熱意を感じた。ベトナムの人たちは日本人の力を望んでいると切実に訴えられ、胸をつかれた」と話す。北部タインホアでベトナム人に軍事技術や訓練方法などを教えた。
現地でベトナム人女性と結婚し、3人の男の子をもうけた。食糧は十分になく、生活は厳しかった。日本に帰国できることを知った時は「率直に言ってうれしかった」。だが妻子の帯同は認められず、三男はまだ妻のおなかの中。残していく家族が心配だったが、ベトナム側から「後は我々が面倒を見る」と言われ、54年11月、帰国の途についた。
帰国後は、日本ベトナム友好協会の設立に参加した。ベトナムの家族とは手紙のやりとりを数回したが、73年まで国交がなかったこともあり、再訪することはなかった。帰国後に日本で知り合って結婚した妻には、ベトナムに家族がいることを打ち明けた。
帰国して42年たった96年、生き別れた長男が来日し、再会を果たした。万感胸に迫るものがあり、「すぐに言葉にならなかった」。
「よくここまで頑張ったなとい…