中国の全国人民代表大会(全人代、国会にあたる)が5日午前、開幕した。李克強(リーコーチアン)首相は冒頭の政府活動報告で、今年の国内総生産(GDP)の実質成長率目標を「6・5%前後」とすることを説明した。成長率を保とうする投資がバブルを生む懸念も高まっており、最高指導部が入れ替わる今秋の共産党大会に向け、安定運営を優先して前年から引き下げた。
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成長率目標は昨年は「6・5%~7・0%」としており、政権は今年、さらに慎重な見方をとった。昨年から始まった13次5カ年計画は成長率について「年平均6・5%以上」を掲げており、今年はこの目標ぎりぎりまで下げたことになる。経済の一定の減速が避けられない中で、不動産価格の高騰などに頼った経済運営を戒める、政権のメッセージとも言える。
政府活動報告は米トランプ政権を念頭に脱グローバリズムや保護主義が強まり、国内外で「より複雑で厳しい局面」に対処する必要があると明記した。
一方で、雇用の目標では「都市部の新規就業者数用を1100万人以上」とし、前年から100万人引きあげた。経済の減速への社会不安が高まることを抑えたい姿勢だ。
財政政策は「より積極的、有効にする」とし、財政赤字はGDP比で3%程度を見込む。一方、金融政策は「穏健・中立を保つ」として、銀行などの貸し出しの全体額の伸びは前年目標より1ポイント引き下げて12%に抑える。利下げなどの金融緩和はバブルの発生を助長する恐れがあるため、これ以上は難しく、政権は財政出動によって景気の下支えを図る方針だ。消費者物価指数(CPI)は3%内に抑えるとする目標を据え置いた。(北京=斎藤徳彦)