笑顔で接客をする山中艶子さん=下館一高
下館一高(茨城県筑西市)の売店に66年間勤めた市内の山中艶子さん(90)が、誕生日の今月28日に引退する。「子どもたちが好き」という気持ちが、長年の原動力だった。お世話になった生徒・教員は2万人を超える。売店のカウンター越しから、ねぎらいの声が引きも切らない。
22日午前、下館一高の体育館であった「お礼の会」で、10年ほど前に患った難病で手足が震えるなか、山中さんは約560人の生徒に言葉を贈った。「2年生は1日、1時間を大切にして喜びの卒業式を迎えて。1年生は学校の中堅として、学校を盛り上げて」。生徒代表の藤巻裕大さん(1年)は「全校生徒の心にやすらぎを与えてくださり、今までお疲れさまでした」と感謝の言葉を述べた。
山中さんは1951年ごろ、校内で売店を開いた。戦後間もない時期で、弁当を持ってこない生徒が多かったため、知り合いの教員らが山中さんに出店を頼んだという。以来、パンやカップ麺、お菓子などの販売を続けてきた。部活動に励む生徒のため、休日も朝から晩まで店を開けた。体力的に限界を感じ、近年は家族らが接客をする機会が増えた。それでも、山中さんはデイサービスに通いながら、少なくとも週に2回は顔を出した。
卒業生の稲見隆校長(59)も、山中さんにお世話になったひとり。「気丈なところも、優しいところも昔と変わらない。ただのパン屋さんではなく、背中を押してくれる『母親』のような存在」と感謝した。
セレモニー後、「うれしかった…