ベルギーのシャルル・ミシェル首相=ロイター
ベルギーのシャルル・ミシェル首相は22日、370人以上が死傷したベルギーの連続テロから1年を機に、朝日新聞の質問に書面で回答した。テロとの戦いで「市民の自由を脅かす者を容赦しない」とする一方、「人々を同一視したり、偏見を持ったりすることに毅然(きぜん)と対応する」と述べ、社会の分断を防ぐべきだとの見方を示した。
――イスラム過激派の若者によるテロの後、ベルギー社会は変わりましたか。
テロは我々に衝撃を与えた。ベルリンやパリ、他の国々も同じような悲しみを経験することになった。それでも、ベルギーは自由の国だ。政府は個々の権利や自由が尊重されるよう努力していく。
――政府はテロの再発防止に向けてどのような措置をとりましたか。
(イスラム過激派に感化された移民家庭出身の若者による)15年1月のパリの週刊新聞襲撃事件と、ベルギーの警察署などを狙ったテロ計画発覚後、安全対策を強化した。政府内でテロや過激主義との戦いの意思は明確だったが、決定手続きを強化、加速した。首相就任後、閣僚などで構成する国家安全委員会をすぐに設置した。計30の措置が決定され、多くはすでに実行されている。例えば、国籍の剝奪(はくだつ)の可能性の拡大や捜査手法の強化(盗聴の活用など)、パスポートや身分証明書の剝奪、テロリストや予備軍の財産の凍結、24時間の捜索を可能にすること――などだ。フランスとの情報共有など捜査協力も強化した。
対策には四つの軸がある。①憎悪や暴力をあおるメッセージの根絶②危険とみなされる人物への労力と予算の集中③治安当局の安全を守る手段の強化④国際的な計画の実行。政府はこれらを必要な限り続けていくが、危険性がゼロになることはない。
――治安と人権の両立は難しいでしょうか。
個人の権利や自由を守ることは大切だ。テロと戦う方針を維持しながら、バランスをとらなければいけない。テロとの戦いは同時に、市民の安全と自由のための戦いでもある。自由で民主的な社会では、人権や自由は保護されなければならない。例えば、信仰の自由、信仰しない自由。どちらも無視できない最も重要な問題だ。市民の自由を脅かす者を容赦しない。それこそが、政府が行動し、改革を行う理由だ。我々は責任を果たし続ける。