チェックアウトの際、女将の山下良子さん(左端)が贈った写真を手にほほえむ陳文娟さん(右から3人目)たち=岐阜県高山市天性寺町
国際観光都市と呼ばれる岐阜県高山市。この冬、町のあちこちを楽しそうに歩く中国人観光客の姿をよく見かけました。で、聞いてみたくなったんです。なぜ飛驒路に? どうやって来ましたか?(永持裕紀)
高山市の中心部を歩く中国客に声をかけ始めたのは1月末から。旧正月(春節)の連休のせいで、その姿がどっと増えた頃だ。記者は1990年代に北京特派員をして、中国の標準語でのやりとりには不自由しない。
訪問の理由や予約方法を尋ねるうち、個人客の共通像がぼんやりと浮かんできた。
雪が見たくて来た。高山は中部空港から近いし、白川郷など飛驒全域を回るのにも便利と考えた。情報を得たのは、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)。ツイッターやウェブサイトの書き込みや口コミを見て宿も決め、ネットで予約する……。まるで今夜の宴会の場所をネット情報で決めるように、気軽に飛驒を選んで来た。そんな感じだ。
ネットでの評判がよい宿を探して、行き当たったのが同市天性寺町の「山久(やまきゅう)」だ。
世界最大級の旅行口(くち)コミサイト「トリップアドバイザー」から2月、「winner(勝者)」として表彰された。内外の旅行者が投稿した口コミの量とその中身がたたえられた。
山久はJR高山駅から歩けば20分近くかかり、地理的には少し不利な場所にある。それでも、中国客は増えていた。
「(春節シーズンの)1~2月、中国のお客の宿泊は370人でした。去年は159人だったから2倍以上ですねえ」と女将(おかみ)の山下良子(よしこ)さん(50)。2014年の中国人客は9人だったというから、激増している。
民宿として46年前に開業し、10年前、古民家の建材をふんだんに使って雰囲気のある「お宿」に改装した。上海から来た陳文娟(チェンウェンチュアン)さん(30)はネットの好評を見て、3月上旬に3泊した。母、叔母たちとの4人旅だ。
「『ドラえもん』に出てくる畳の部屋に1度泊まってみたかったんです」と笑う。「駅から離れていても、『マイクロバスの送り迎えがある』と書き込みがあったし、周りの静かな環境が気に入って決めました」
クレジット会社に勤め、日本旅行は一昨年の京都、大阪以来2回目。米国、タイ、韓国なども旅したが、今回は雪景色を味わいたくて飛驒路に。「温泉でのリラックスも楽しみでした。日頃、とにかく上海で忙しくしていますから」
計6泊7日の総費用は1人約5千元(約8万3千円)という。中部空港、高山、白川郷、奥飛驒・平湯温泉、名古屋を巡る旅程も、陳さんがネット情報を参考に組んだ。