舞台裏に設営された仮設楽屋。8畳と10畳の部屋が計5室用意された=京都市左京区、佐藤慈子撮影
花街・祇園甲部(京都市東山区)の舞台公演「都をどり」。祇園甲部歌舞練場が耐震調査のため昨秋から休館し、会場を約6キロ離れた「京都芸術劇場 春秋座」(京都市左京区)に移すことで、関係者はこれまでにない対応に追われている。公演回数が減り、赤字を覚悟しながらも「今年ならではの都をどりを楽しんで頂きたい」と奮闘している。
祇園甲部歌舞練場の本館休館へ 来春、都をどり会場変更
3月中旬、歌舞練場の敷地内にある「八坂女紅場(にょこうば)学園」で、都をどりの通し稽古があった。「そこ確認しとこか」。京舞井上流家元、井上八千代さん(60)の声が飛ぶ。演出を担当して25年。甲部歌舞練場以外での公演は初めてだ。
「すべてが未知数。すごく不安でもあるけど、新しい魅力を感じて頂けるチャンスかな、とおもてます」
2本だった花道が1本になる。回転舞台がある。照明の数も場所も違う。環境が変わると、歩数や立ち位置など、これまでの経験則は通用しなくなる。
変えないことは、「華やかさ」だ。「去年より寂しいな、みたいには絶対にしたくない。舞う人が楽しい気持ちで舞えることを一番大事にして、稽古してます」と話す。
春秋座は、京都造形芸術大学が授業で使う日もあり、公演期間が30日間から21日間(4月1~23日。10、17日は休演)になった。また芸舞妓(まいこ)らの移動に時間がかかるため、1日の公演数は4回から3回になり、期間中の観客数は約9万人から約4万人と、大幅に減る見込みだ。
一度は休演も検討されたが、春…