認知症サポーターのPRキャラクター「ロバ隊長」。急がず、しかし一歩一歩着実に進むイメージが込められている(全国キャラバン・メイト連絡協議会提供)
認知症を正しく理解し、本人やその家族を支える「認知症サポーター」。12年前に日本で始まったこの取り組みが計11カ国、約1200万人に広がっている。京都市で26日から始まった国際アルツハイマー病協会国際会議(認知症国際会議)で、その活動が報告される。同会議は29日まで。
三浦雄一郎さん「認知症は誰もが関わる身近な病気」
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認知症サポーターは、認知症の症状や本人への接し方、場面に応じた支援の方法について学ぶ約90分の無料講座を受講し、認定される。程度の差はあるが、多くの国で認知症への偏見は根強く、正しい知識を持った理解者が増えることは大きな意味を持つ。認定が、ボランティアなどさらなる活動に取り組むきっかけにもなっている。
日本で認知症サポーターを養成している「全国キャラバン・メイト連絡協議会」(東京都新宿区)や海外の養成団体などによると、日本が約883万人、英国(イングランド、ウェールズ)が約196万人。そのほか、アジア、欧米、アフリカにも広がっている。
拡大に大きな役割を果たしたのは英国だ。2013年に、英国アルツハイマー協会が日本のサポーター制度を参考に、「ディメンシア(認知症)フレンド制度」を発足させた。手法や内容は同様だが、インターネットでの受講もできる。
同じ年に当時のキャメロン首相の呼びかけで「主要8カ国認知症サミット」をロンドンで開催。高齢化が進む中、認知症を先進国共通の課題ととらえ、認知症フレンドの拡大に力を入れた。15年の世界保健機関(WHO)の会合では、途上国も含め、国を超えて取り組みを進めることで一致。英国の「フレンド」が世界に拡大した。
普及啓発のために英国アルツハイマー協会が作った動画は、ビートルズの元メンバー、ポール・マッカートニーさんも協力している。
英国アルツハイマー協会の国際担当、フィリッパ・ツリーさんは「認知症の人に優しい社会を築くために、各国が協力して対策や活動を共有していくことが大切。そのために、気軽に取り組める認知症フレンドは有効な手段だ」という。(北村有樹子)
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〈認知症サポーター〉 厚生労働省が2005年に、認知症への偏見をなくすために始めた。日本ではこれまでに、自治体や職場、学校などで約26万5千回の講座が開かれ、約883万人のサポーターが生まれている。誰でも受講できる。
■認知症サポーターがいる国
日本、英国、カナダ、ドイツ、ナイジェリア、中国、米国、デンマーク、オランダ、インドネシア、韓国
■準備中の国
クロアチア、イスラエル、モーリシャス、ポルトガル、ドミニカ
※英国アルツハイマー協会などへの取材による