日本銀行は27日の金融政策決定会合で、景気の基調判断を「緩やかな拡大に転じつつある」と上方修正した。「拡大」の表現が入るのは、リーマン・ショック前の2008年3月以来、約9年ぶり。17年度の物価見通しは下方修正した。大量の国債を買い入れて長期金利を「ゼロ%程度」に誘導する金融緩和策は「現状維持」とした。
これまでの景気判断は「緩やかな回復基調を続けている」だった。海外経済が堅調で輸出や生産が持ち直したことを反映した。昨秋の米大統領選後の円安で企業収益も増えた。
会合では3カ月に1度公表する「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」もまとめた。物価上昇率の見通しは、16年度は1月時点のマイナス0・2%を同0・3%に、17年度はプラス1・5%を同1・4%へそれぞれ引き下げた。今春闘での賃上げは振るわず、企業は値上げに踏み出しにくくなっているためだ。
18年度はプラス1・7%で変更せず、新たに示した19年度は同1・9%とした。目標の「物価上昇率2%」の達成時期は「18年度ごろ」で据え置いた。
実質国内総生産(GDP)の成長率見通しは、16年度は1・4%で変えず、17年度は1・5%から1・6%に、18年度は1・1%から1・3%にそれぞれ引き上げ、19年度は0・7%とした。
金融政策は政策委員9人(総裁、副総裁2人、審議委員6人)のうち、賛成7、反対2の賛成多数で決めた。金融機関から預かるお金の一部につけるマイナス金利は年0・1%で据え置き、長期国債の買い入れ額は「年約80兆円をめど」で変えなかった。
黒田東彦(はるひこ)総裁は27日午後に記者会見し、会合の決定内容について説明する。(藤田知也)
■日銀の新たな経済・物価見通し
・消費者物価指数
2016年度 -0.3(-0.2)
17年度 1.4(1.5)
18年度 1.7(1.7)
19年度 1.9
・実質国内総生産(GDP)
2016年度 1.4(1.4)
17年度 1.6(1.5)
18年度 1.3(1.1)
19年度 0.7
※前年度比(%)。かっこ内は1月の見通し。19年度は新たに示した。物価は生鮮食品と消費増税の影響を除く
■日銀が今回まとめた「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)の主な内容
・景気は緩やかな拡大に転じつつある
・海外経済は緩やかな成長が続いている
・輸出・鉱工業生産は増加基調にある
・雇用・所得環境の着実な改善を背景に、個人消費は底堅く推移している
・先行きの経済は緩やかな拡大を続ける
・物価はプラス幅の拡大基調を続け、2%に向けて上昇率を高めていく。2%程度に達する時期は18年度ごろ