「反難民」などを掲げるドイツの新興右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は、23日までケルンで党大会を開いた。「現実路線」への転換を求めたペトリ党首の提案は採決すら行われず、事実上の「廃案」となった。対外的な「顔」として党の躍進を支えてきたペトリ氏が孤立したことで、党勢の失速は避けられない見通しだ。
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党大会では、9月の総選挙の公約として、国境管理の強化やイスラム教徒のスカーフ着用の禁止、欧州連合(EU)からの国家主権の回復などが採択される。
選挙運動を率いる「筆頭候補」には、ペトリ氏より強硬な右派が就く見通し。去就を問われたペトリ氏は、記者団に「党がどうなるのか、秋まで様子をみたい」と語ったが、存在感の低下は否めない。
党内の亀裂は1月にあらわになった。党内最右派の幹部として知られるチューリンゲン州議会党会派代表ビヨルン・ヘッケ氏が、ベルリンにあるホロコースト記念碑を「恥辱の記念碑」と発言。ペトリ氏は除名を含む処分を検討したが、ガウラント副党首らが幹部側についた。以前から、党内右派はペトリ氏の運営手法を「独裁的」と批判していて、発言を機に主導権争いが表面化した。
AfDは共通通貨ユーロへの反対を訴える経済学者らが2013年に発足。その後、15年にメルケル政権の難民受け入れを強く批判するペトリ氏が党首に就いた。ただ難民流入の減少や、中道左派・社会民主党(SPD)がシュルツ新党首のもとで支持率を回復したあおりを受けて、昨秋に15%前後あった支持率が10%前後に下落している。(ベルリン=高野弦)