ピッチで練習する西大輔選手=3月28日、大分県由布市挾間町
サッカーJFL(日本フットボールリーグ)のヴェルスパ大分に今季、聴覚障害のある選手が入団した。試合中は周りの声が聞こえにくい分、仲間の動きやクセを覚えて補う。Jリーグでのプレーもめざし、練習に汗を流している。
大分県由布市の練習グラウンド。両耳に補聴器をつけたMF西大輔選手(18)が、紅白戦のピッチに立った。「へい!へい!」と何度も声を出し、ボールを受けるとドリブルでゴールに迫った。
「西、戻れ!」。守りに転じると、GKの指示が聞き取れない場面も。すぐに仲間が身ぶりで伝えた。
徳島市出身。生まれつき聴覚障害があった。小学1年で、地元の健常者のサッカークラブに入った。そのころ、テレビでパラリンピックを見た。義足の陸上短距離選手や片腕の競泳選手が活躍していた。「障害があっても大舞台に立てるんだ」と驚いた。
サッカークラブでは、じっと仲間の動きを目で追った。どんなプレーが好きなのか、どのタイミングでパスが欲しいのか――。試合中は声が聞き取りにくい分、ほかの選手たち以上に仲間の動きを予測しないといけないからだ。
学校生活でも、人一倍頑張った。小学校は普通学級に進んだが、手話しかできなかったため、学校では話し相手がほとんどいなかった。「もっと友達を作りたい」。中学校で、相手の口の動きを見ながら会話する「口話」を身につけた。同級生に勇気を出して「口をよく見せて」「ゆっくり話して」と頼んだ。最初は煙たがられた。でも、1人、2人と友人が増えた。
サッカーも上達した。中学時代…