4日のASEAN各国との外相会議に先立ちトランプ氏は4月末、フィリピンのドゥテルテ大統領、タイのプラユット暫定首相、シンガポールのリー・シェンロン首相に相次いで電話をかけ、訪米を招請した。
トランプ氏「最悪の電話だ」 豪首相との会談で怒り出す
特集:米トランプ大統領
このうち、フィリピンは多くの市民が殺害されている強引な麻薬犯罪取り締まりで、タイは2014年の軍事クーデターで、いずれもオバマ前政権から批判され、対米関係がぎくしゃくしていた。
トランプ政権は北朝鮮問題や中国とせめぎ合う南シナ海問題なども見据え、人権や民主化の問題には目をつぶって修復に動いたとみられている。フィリピン、タイも歓迎しており、外交関係が再び活発化するとみられる。
ターンブル豪首相との会談も、関係修復の一環だった。トランプ氏は1月、ターンブル氏との電話会談で豪州からの難民受け入れをめぐり、「最悪の電話だ」と怒って会談を打ち切ったと伝えられたが、豪州側も地域の安定に欠かせない同盟国の米国と首脳同士での関係修復を急いでいた。
会談後、2人は米豪が日本と戦った第2次世界大戦の珊瑚(さんご)海海戦から75年の記念式典に参加。トランプ氏は「両国間に鉄の絆が築かれた」と演説し、関係強化をアピールした。
ティラーソン氏は8月にフィリピンで開かれるASEAN地域フォーラム(ARF)に参加。トランプ氏も、11月にフィリピンで開かれる東アジアサミットなど一連の国際会議に出席する予定で、オバマ前政権が掲げた「アジア回帰」政策を実質的に受け継ぎ、アジア・太平洋地域で影響力を強めていきたい考えだ。
ただ、この地域の国々がこぞって米国の思惑通りに動く保障はない。南シナ海問題ではドゥテルテ氏に中国への配慮が目立ち、経済的な関係から中国批判を避ける国もある。タイ政府の代表は5日、中国製の潜水艦を購入する契約書に署名した。ASEAN外交筋は「どの国も米中との間でバランスを取ろうとするのではないか」と指摘した。(バンコク=貝瀬秋彦、シドニー=小暮哲夫)