日本老年医学会と日本糖尿病学会は65歳以上の糖尿病患者に限定した診療指針を初めて作成した。通常、糖尿病の治療ではたんぱく質の摂取量が制限されるが、高齢者の場合、筋肉量が落ち、歩行や立ち上がる能力の低下につながる恐れがある。このため「重度の腎機能障害がなければ、十分なたんぱく質をとることが望ましい」とした。18日から名古屋市である日本糖尿病学会でシンポジウムを開くなどして内容を周知する。
高齢の糖尿病患者は重い低血糖になりやすく、うつやQOL(生活の質)の低下、転倒につながる場合がある。そのため指針は、昨年5月に両学会が公表した、若い患者の目標値よりもやや緩くした血糖管理の基準値を記載。日常生活活動度(ADL)や認知機能、薬の使用状況などに応じて7グループに分類し、直近1~2カ月間の血糖の状態を示す「ヘモグロビン(Hb)A1c」の上限について、従来の6~8%未満を7~8・5%未満に変更した。
また、認知機能や身体機能の評価、血糖管理の目標値など15項目についても解説。終末期ケアについては、患者が「尊厳のある人生を全うできるように援助する」と記載し、薬の減量や中止も選択肢とした。
日本老年医学会の代表として指針の作成に関わった井藤英喜・東京都健康長寿医療センター理事長は「この指針を診療に生かしてもらうと同時に、指針で明らかにした解決すべき課題について研究が進んでほしい」と話している。(南宏美)