韓国大統領選の公式な選挙運動が解禁される直前、朴槿恵前大統領の釈放を求めてデモをする高齢者ら=4月15日、ソウル市鍾路区、武田肇撮影
朴槿恵(パククネ)前大統領の弾劾(だんがい)訴追から罷免(ひめん)、逮捕に揺れた韓国で、後任を決める大統領選が5月9日に迫っている。一連の事件では、朴前大統領の支援者チェ・スンシル被告による国政介入や利権あさりが問題になり、「持てる者」と「持たざる者」の格差が改めてクローズアップされた。大勢の「無年金老人」の問題に即効性のある処方箋(せん)はなく、困窮する高齢者が朴前大統領に向けるまなざしは複雑だ。
特集:韓国大統領選
ソウルで高齢者の人口が最も多い北西部・恩平(ウンピョン)区。朴殷準(パクウンジュン)さん(76)は週5日、ミニバンで住宅街を回り、揚げ菓子を注文先に配達している。妻は電子部品の検査のアルバイトをして、夫婦で共に過ごす時間は1日2時間ほど。2人でそこまで働いても、年金がないため、1カ月に必要な生活費約150万ウォン(約15万円)に届かない。
韓国の65歳以上の高齢者は657万人で、総人口の13・2%(2014年)を占める。20年前の約2倍。2030年には1千万人を突破し、4人に1人が高齢者になると予想されている。
「超高速」と言われる超高齢化社会を迎えて深刻化しているのが、高齢者の貧困だ。年金制度の整備が遅れた韓国では、高齢者の約6割が年金ゼロ。統計庁によると、高齢者の半分以上が預金など老後の備えがない。短期間で経済成長し、社会保障が後回しにされてきた「圧縮成長」のひずみとされる。
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