慰霊式で献花する東海大の教職員や学生ら=16日午前11時24分、熊本県南阿蘇村、金川雄策撮影
熊本地震の本震から1年を迎えた16日、甚大な被害を受けて閉鎖している南阿蘇村の東海大阿蘇キャンパスで、農学部主催の慰霊式があった。建物の安全が確保されていないため、屋外に学生17人を含む約120人が集まり、犠牲になった学生3人を思い、前を向こうと決意した。
熊本地震
熊本地震1年 写真特集
「私たちが立っているこの阿蘇キャンパスは、移り変わる四季の美しさとともに、多くの学生諸君の笑い声が絶えることが無かったキャンパスです」。荒木朋洋農学部長(62)は慰霊の言葉でそう振り返った。約800人が学んだかつてのまなびやの真下には活断層が走り、階段は途中で裂けたように鉄骨がむき出しになっている。窓ガラスも割れ、グラウンドには災害廃棄物が積み上がっている。
本震では、アパートや下宿の倒壊により学生3人が犠牲となった。学生代表として慰霊の言葉を述べた農学部3年の田中大智(だいち)さん(20)は犠牲者の一人、大野睦(りく)さん(当時20)と同じ観光施設でアルバイトをしていた。「私たちは一晩で数え切れない多くのものと、大切な仲間を失い、はかりしれないほどの大きな悲しみを経験した」と振り返った。
一方で、全国から応援メッセージや支援物資をもらったことに感謝し、「おかげで大きな悲しみを乗り越えることができた」と述べた。大学にはこの春、地震を知らない新入生たちが入学してきた。田中さんは「熊本地震の経験や記憶を伝え、前を向いて生きていく」と話し、今後は語り部として地震を風化させないよう活動すると誓った。(小原智恵)