ミット打ちで汗を流す村田諒太(右)=2017年5月9日 東京・有明コロシアムで20日夜、世界ボクシング協会(WBA)ミドル級王座決定戦に、2012年ロンドン五輪金メダルの村田諒太選手(31)=帝拳=が挑む。メダリストの日本選手が世界チャンピオンのベルトを巻けば史上初になる。 ボクシング五輪金の村田 5月にミドル級世界戦に初挑戦 ボクシングの日本選手では48年ぶりの金メダリストとして、一躍時の人となった。歩いているだけで声をかけられる。友人と店で食事をしていたら周りに人だかりができた。「みんなが思っている自分にならなきゃいけないな、と。人の目を気にするようになった」 一度は現役引退も考えたが、「ボクシングを始めたころの夢(プロの世界王者)を忘れてしまっていいのか」と悩んだ末に、プロ転向を決意した。特例でプロテストに合格したり、世界的プロモーターと契約したり。周囲の期待は高まる一方だった。 13年8月のプロデビュー戦は現役の東洋太平洋王者が相手だった。試合前には父親の誠二さんに電話をかけ、涙ながらにこぼした。「怖い。やりたくない」。だらしない試合をして、周りからの評価を落とすことを恐れていた。 試合の数日前、誠二さんからメールが届いた。「結果ではなくて、いま自分にできることを表現する方が大事なんじゃないか」。文面を見て、沈んでいた気持ちが一気に軽くなった。 ビッグマウスと呼ばれる選手も多いプロボクシングの世界にあって、村田選手は虚勢を張らない。「不安になるときもある」 そんなときは、頭の中で自問自答を繰り返す。「いろいろ考えてもしようがない。お前の強みは何だ」。すかさず、答える。「大舞台に強いハートとパンチ力」。導き出される言葉は「じゃあ、それで勝負するしかないよな」。揺れる心から逃げずに向き合い、雑念を一つずつ取り除いていく。プロの世界で、何度となくやってきた作業だ。 今回の世界戦前も、穏やかに言っていた。「優先しているのは、自分の戦い方に集中してベストを尽くすこと。勝敗は結果論」。葛藤の末にたどりついたシンプルな思考こそ、村田にしか貫けないボクシングスタイルと言える。(清水寿之) |
葛藤の末、スタイル確立 村田諒太、虚勢張らず世界へ
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