カレイのから揚げや若竹煮の献立=東京都東久留米市
毎日の昼ご飯を、中・高の生徒が手作りしている学校がある。自由学園(東京都東久留米市)の女子部は、当番の生徒が全員分を用意するユニークな方法を続けて96年。「給食」ではなく「お食事」と呼ぶ。みんなで力を合わせて作り、食べるひとときが学びの場だ。
■畑で野菜、後片付けも
「ご飯が炊けました! 15分蒸らします」。白衣の生徒たちが声をかけあい、厨房(ちゅうぼう)できびきび働いている。
若竹煮のワカメを切る人、カレイを揚げる人、すまし汁や大豆入りご飯を作る人。4月下旬のある日は、高等科1年の18人で約300人分を作った。
午後0時40分、中等科と高等科、計6学年の生徒と先生が食堂にそろって「いただきます!」。食事作りのリーダーが反省を述べ、かかった費用や栄養について報告した。
当番は、中等科1年から高等科2年までが1学年ずつ日替わりで務める。学年の半数の生徒が3、4時間目の授業で食事を作り、残りの半数は食器の後片付けを担う。
2週間前に教諭らと献立を相談し、学園の畑で育てた野菜を使うこともある。学年ごとに調理の年間テーマを決めている。中等科1年は薪でのご飯炊き、2年はだしの取り方、3年はカレーやホワイトソースのルーの作り方、というふうに。
この日は高等科1年のテーマ「魚料理、揚げ物」をもりこみ、春らしく。タケノコは前日に下ゆでし、当日は朝7時10分に登校し、始業前に野菜や米の下ごしらえをした。
「かまどで炊くご飯は焦がさないようにと緊張する」と村上夏海さん(15)。横山佳月日(かづひ)さん(15)は料理が苦手で、2週間に1度、当番が回ってくるなんて最初は嫌だった。「だけど、おいしかったよとみんなに言ってもらえて達成感があります」
自由学園は1921年、ジャーナリストの羽仁もと子、吉一夫妻が創立した。当時は女学校で、現在の女子部にあたる。「あたたかい昼食を自分たちの手で、と当初は創立者の家の台所で料理が始まったと聞いています」と広報の椚田(くぬぎだ)結子さん(59)。その後、初等部や男子部、幼児生活団(幼稚園)、最高学部(大学部)を設けるなかで、女子部のみ、生徒が毎日の昼食作りを続けてきた。
高橋和也・学園長(55)はこう話す。「畑で野菜を作り、力を合わせて料理し、みんなで食べる。生活すべてが学びの場です。仲間が心をこめて作ったものを毎日食べるのは幸せですよね」