6歳以下の子がいる世帯の1日の家事と家族のケアの平均時間
育児の風景を描いたおむつの動画広告に、批判が集まっている。何が問題なのか。
赤ちゃんの夜泣きで何度も起きる母親。食事は抱っこして片手でおにぎり。散らかった部屋でぼんやり、泣き声で我に返る――。
日用品メーカー「ユニ・チャーム」が、紙おむつ「ムーニー」の宣伝用にネットで公開した動画だ。終盤で母親は笑顔になり、最後に「その時間が、いつか宝物になる。」という言葉が現れる。約2分間の映像で、父親は後ろ姿や横顔が数秒映るだけだ。
公開は昨年12月だが、同社の別の動画が批判を受けたのを機に、5月に入って話題に。再生回数は25日現在71万回を超え、ツイッターで「大変な時期を思い出して吐きそう」「1人きりの子育てを正当化している」との意見も出た。2人の子がいる東京都の会社員女性(31)は「子育て=母親1人でするもの、という扱いに違和感があった。問題提起はいいけど、まだまだ寛容さが足りない社会をどう変えていくかという、もう一つ先の発想が必要では」と話す。
育児に積極的にかかわる父親「イクメン」が新語・流行語大賞のトップテンに入ったのは2010年。ただ、総務省の社会生活基本調査(2011年)によると、5歳以下の子がいる人の家事や家族のケアの時間は、男性が1日あたり1時間16分、女性が7時間2分と大きな差がある。最近は、1人の従業員が全ての仕事をこなす「ワンオペレーション」を語源とした「ワンオペ育児」という言葉も広まる。シングルの家庭だけでなく、夫の単身赴任や長時間労働、協力的でないなどの理由で、1人で家事と育児、仕事に追われ、心身の不調を訴える母親もいる。
動画の狙いについて、同社の広報担当者は「多くの母親が置かれた状況をリアルに描き、あなただけじゃないよ、と勇気づけたかった。応援したいというメッセージを込めた」と説明する。2人の子がいる高知県の自営業女性(41)は夫も育児に協力的だが「そうそう、そうだよね、と泣きそうだった。母親の孤独や大変さを上手に伝えていると思う」。同社への意見は賛否両論で、「現状を理解してくれた」という声もあり、公開は続けるという。
共感を呼んだ動画もある。先進…
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