購入者に渡す前のグラブをほぐす竹島一成さん=2018年5月、宮崎県日南市
宮崎県日南市のスポーツ用品店「晃正(こうせい)スポーツ」は半世紀以上、球児たちに野球道具を販売してきた。店を営むのはいずれも強豪日南学園で主将を務めた竹島兄弟。「最高のパフォーマンスができるように」と思いを込めた道具を届ける。
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JR日南駅から徒歩15分ほどにある晃正スポーツ日南店には、赤や黄など色とりどりのグラブが並ぶ。店には近くの日南学園や日南、日南振徳の球児たちが訪れる。仲間と楽しそうにグラブを選んだり、淡々と感触を確かめたり。
「最近のグラブは革質も良くなって、値段も上がっている。自分の体の一部のように大事に使ってもらいたい」と代表で兄の一成さん(42)は話す。
店を引き継いだのは2007年。自身も高校生の時に通い、学校シューズのメーカーに就職してからも卸し先として訪れていた。そんな中、先代の店主から高齢を理由に後継を打診された。迷いもあったが、日南学園の恩師、小川茂仁監督(当時)に背中を押されたこともあって引き受けた。
この年、日南学園は選手権大会に出場。宮崎大会決勝から甲子園の開会式リハーサルまでの約10日間でユニホームなどを新調せねばならず、ばたばたと準備を進めた。「甲子園の舞台は華やかだけど裏方は大変。それでも、店で背番号を縫い付けたユニホームを着ている選手を見ると、すごく誇らしかったです」
一成さんを支えるのは弟の誠さん(39)だ。誠さんは現役時代、97年春の選抜大会に日南学園の4番打者として出場。5番には現在西武ライオンズコーチの赤田将吾さんがいた。「観客がすごくて楽しさ半分、緊張半分。当時は守備が下手で失策ばかりでしたが、道具を大事にする意識は高かったですよ」と振り返る。
誠さんは道具の修理を担当。オイルも塗らず、泥だらけのグラブを見ると少し心配になる。「手入れもせず、失策をすると仲間から『やっぱり』と思われる。信用問題なんです」。助言とともにグラブを手渡す。
修理する際、意識するのは修理後に違和感がないようにすること。ひもの交換一つでも、カンナでミリ単位で削り、ハンマーを使ってたたいてほぐす。気付いて礼を言う選手がいると、試合で活躍する姿が目に浮かぶ。
夏の大会期間になると、「明日、試合なんです」と修理を頼まれることもある。「店の閉店時間に持ち込まれても修理をしてあげなきゃと。できる限りのことはしてあげたい」
今年は100回の記念大会。誠さんは「節目の年にいるだけですごい。私たちにできることは100%の道具を提供すること。そこから先は選手次第。一生懸命な選手たちを応援したい」とエールを送る。(松本真弥)