米国が「パリ協定」からの離脱の方針を固めたと報じられたことに対して、これまで米国とともに協定を推進してきた国から戸惑いの声が上がった。
米大統領「環境規制、雇用創出の重し」 パリ協定離脱か
米トランプ政権、パリ協定から離脱方針 地球温暖化対策
特集:パリ協定
ドイツのデマー政府副報道官は31日の会見で、米国のパリ協定離脱の報道について「報道以上のことはわからない。ドイツは協定を順守する。米国も義務を果たすことを期待する」と、困惑気味に語った。
メルケル首相は前日、訪独中のインドのモディ首相とベルリンで会談し、パリ協定への対応についても話し合ったばかり。メルケル氏は共同会見で「インドがパリ協定を熱心に実行に移そうとしていることをうれしく思う」と述べた。記者から「もし米国がパリ協定から離脱しても、協定を守るか」と問われたモディ氏も、「次世代のための環境を台無しにしてしまうことは犯罪的だ」とし、順守する考えを示していた。
一方、中国の一部メディアも31日夜、現地報道を引用する形で米国の協定離脱の方針を速報した。中国は世界最大の排出国として、オバマ前米大統領とパリ協定の採択と早期発効に向けて協力してきた。
トランプ政権が離脱の姿勢を見せてからも、習近平(シーチンピン)国家主席は協定を堅持する姿勢を示している。地球環境の保護は「責任ある大国」として国際的にアピールできる分野でもある。自国の産業に痛みは伴うが、電気自動車など新エネルギー車への転換を進める目標も設定している。米国が離脱すれば、具体的なルール作りなどで主導権を握れるとの思惑もありそうだ。(ベルリン=高野弦、北京=延与光貞)