将棋大会で対局する小学1年生の時の藤井聡太四段(2009年、家族提供)
将棋の中学生棋士、藤井聡太四段(14)=愛知県瀬戸市=が21日、王将戦1次予選で澤田真吾六段(25)=三重県鈴鹿市=に勝ち、歴代最多の連勝記録に並ぶ公式戦28連勝を達成した。かつて藤井四段が通った瀬戸市の将棋教室の生徒や指導者らから喜びの声が上がった。
藤井四段、強さの理由 羽生三冠「光速の寄せと重なる」
21日午後5時ごろ、幼少の藤井四段が通った「ふみもと子供将棋教室」(瀬戸市)に生徒が集まる。普段通りの光景だ。
棋譜並べをしているときに、先輩の勝利を知った小学5年の正親(まさちか)直人君(11)は「次の対局でも勝って単独1位になってほしい。藤井君みたいに自分も強くなりたい」。小学5年の中津長志(たけし)君(10)にとっても憧れの人。「これからも勝ち続けてほしい」
将棋の歴史をまた一つ塗り替えた教え子について、文本力雄さん(62)は「よかったなあ」と笑顔で一言。「最多記録に並んでほしいという声が周りからも聞かれた。皆さんの思いが伝わった」と振り返った。
教室があったこの日、文本さんはテレビ観戦などはせず。「これまでもこれからも一喜一憂せず見守っていく」。藤井四段が5歳から4年9カ月通った教室の壁には「最年少プロ棋士 藤井聡太 おめでとう」との筆書きや、藤井四段の新聞記事が丁寧に貼られている。この一軒家の6畳2間で藤井四段は腕を磨いた。
「100年に一人の逸材ではないか」。文本さんは当初から感じていた。通い始めた1年間で、約480ページの定跡本を暗記し、20級から4級に昇級した。
この日、20人を超える報道陣が教室に詰めかけた。28連勝したその強さを改めて問われた文本さんは「将棋をするために生まれてきたような子。体が、細胞の一つ一つが、将棋でできているようだ」と語る。期待される記録の更新。教え子に対する思いは変わらない。
「聡太にとっては通過点の一つ。彼は大きい志を持っている。私からかける言葉はありません。ただ黙って見守りたい」
藤井四段は小学1年で日本将棋連盟東海研修会(名古屋市)に入会。研修会でプロとして指導したのが今回対局した澤田六段だ。ハンディをつけて5回対局し、藤井四段の3勝2敗の記録が残っている。
研修会の事務局を担当し、2人を知る竹内努さん(60)は「藤井四段は連戦の疲れもあったはず。ここまで勝ち続けるとは思わなかった。今後は体力面や精神面が心配だが、できるだけ連勝を伸ばしてほしい」と期待する。澤田六段についても「(今月2日に敗れ)リベンジに燃えていたが、気合が空回りしてしまったのかもしれない。高校生でプロになった実力者。将来、2人がタイトルをかけて対戦するところを見てみたい」と話した。(浪間新太、斉藤佑介、滝沢隆史)