架線断線のため止まっていた新幹線が博多駅に到着。疲れた表情で列車を降りる乗客=22日午前4時24分、福岡市博多区のJR博多駅、河合真人撮影
東海道新幹線の京都―新大阪間の下り線で21日午後7時55分ごろに発生した架線の断線による停電。この区間で線路上で立ち往生した新幹線が、運転再開で新大阪駅に到着し、乗客が改札を出始めたのは5時間以上がたった翌22日午前1時すぎだった。疲れた表情の乗客らが一斉にホームから改札口へと急いだ。
新幹線停電、深夜に復旧 原因は異例の架線切れ
新幹線に缶詰め、復旧に安堵 暑さと渇き、疲労色濃く
長い時間飲食できなかったためか、駅構内の土産店には行列が。飲料水やパンを買う人であふれた。
改札口付近では、新幹線特急券を払い戻す窓口に何十人も並んでごったがえした。中には、「なぜ復旧がこんなに遅かったのか」と駅係員に詰め寄る男性も。
駅構内の待合室をのぞくと、横になったり、前かがみになったりして仮眠をとる人が30人ほどいた。タクシー乗り場には、200メートルほどの大行列ができていた。
大阪府八尾市の自営業の男性(48)は21日午後5時ごろに新横浜駅を出発。京都駅を過ぎたあたりで新幹線が、ゆっくり止まった。「新大阪に到着する新幹線が、前に5本ほど待っています」と車内アナウンス。30分ほどすると動き出した。
しかし、その数分後、新幹線は急ブレーキ。窓の外に稲妻のような青白い火花が飛び、バチッという音がした。車内は停電で暗くなり「原因を究明しています」とのアナウンス。車内灯は約1時間でついたが、結局6時間近く閉じ込められた。新大阪にたどり着くまでの最後の1時間ほども停電していたという。
車内は混み合っていた。男性はパソコンで仕事をしていたという。「電気が通っているときは、みんなで短時間ずつコンセントを使い、スマートフォンの充電をした。早く家に帰りたい」と話した。
出張先の東京から帰る途中だった大阪府吹田市の会社員女性(37)も車内に缶詰になった。「携帯で漫画を読んでいました。とにかく寝たいです」と苦笑い。
兵庫県宝塚市の主婦(68)は、友人女性と東京の親戚宅に遊びに行った帰りだった。京都を過ぎた付近で停車し、断続的に停電した。友人からは「大丈夫?」と安否を気遣うメールが届いた。いつ復旧するのか分からず、読書して時間を潰したが、「まるまる1冊を読み終えてしまった。時間が経つのが長かった」。21日午後8時前には新大阪に着く予定だったが大幅に遅れ、すでに終電はない。構内に設けられた「列車ホテル」に乗り、始発で帰宅する予定という。「本当に疲れた。まさかこんなことになるなんて」とため息まじりに漏らした。
一方、停電の影響を受けて、運転の見合わせや遅れが東へ西へと広がった。
北九州市に住む会社員男性(57)は22日午前1時ごろ、目的地の新神戸駅に着いた。21日午後7時半ごろに小倉駅から乗車したが、途中の駅や線路上でたびたび停車したり、岡山駅と姫路駅で別の新幹線に乗り換えさせられたりしたという。「今から兵庫県西宮市にある自分の会社の寮に向かうが、もうタクシーで行くしかない。かなり疲れた」とぐったりした様子だった。(吉川喬、鈴木洋和、森岡航平)