健大高崎の山下
■大阪夏の陣
大阪桐蔭と履正社2強時代へ 激戦区、私学7強から変遷
東海大仰星に大体大浪商… 大阪2強に追いつけ追い越せ
「関西弁? 自然と出なくなりました。あ、でも気分が高揚すると出ます」
そう言って笑うのは、今春の選抜で8強入りした盛岡大付(岩手)の主将比嘉だ。今月9日。東北大会2回戦で負けたが、自身は2安打。3季連続の甲子園出場へ向け、表情は明るい。
比嘉は「甲子園に出るために盛岡大付に来た」と言い切る。
実家は大阪市の京セラドーム近くで、中学時代は硬式の「大正ボーイズ」で1番遊撃手。府内の強豪からも誘いはあったが、「大阪はたとえ、大阪桐蔭や履正社でも甲子園に行けるか分からない。ここにきて昨夏、選抜と甲子園に出られた。よかったと思う」。
同じように、大阪を離れて活躍する選手は多い。今春の選抜に出場した32校の566選手のうち、大阪の中学やクラブチーム出身者は50人以上いた。盛岡大付は高校通算50本塁打超えの1番植田も大阪出身。2本の満塁弾を放った健大高崎(群馬)の4番山下、福井工大福井の主将北川もそうだ。
背景には大阪の野球熱の高さがある。有力選手が多く輩出する硬式の「ボーイズ」、「シニア」の両リーグの選手数がそれを物語る。昨年度は大阪が計4774人で、東京の4506人を上回る。中学生の総数では東京が約7万人多いにもかかわらず、だ。
大阪を出る選手は以前からいたが、今は少し事情が違うようだ。
母校の大阪桐蔭で藤浪(阪神)らを教え、2013年から福井工大福井を指導する田中コーチ(43)が言う。「我々の高校時代はトップの選手がPL学園、次のレベルが府内の強豪校。大阪では試合に出られないかなという選手が、府外へ、という印象だった」
それが、実力があっても他県へ進む選手が増えた。「情報化が進み、全国の学校や指導者の情報が入手しやすくなり、子どもたちが地域を問わずに学校を選ぶようになったのでは」と田中コーチ。学校側も同じで、大阪のボーイズやシニアの練習や試合には全国の高校から関係者が来る。
福井工大福井には部員が152人いるが、7~8割が関西出身。北川も中学時代、多くの高校関係者がチームを訪れた中で、「甲子園のため」と福井へ来た。「大阪のチームと全国で戦えたら気合が入ると思う」。決意を持って故郷を飛び出した選手たちの夏もまた、始まる。(山口史朗)