菊正宗酒造の社長に就任した嘉納治郎右衛門氏(右)と嘉納毅人会長=26日、神戸市東灘区
神戸・灘の清酒メーカーで、40代の新社長が相次いで誕生している。清酒業界は国内の販売が伸び悩む一方、海外での日本酒人気など、明るい話題も多い。若い感性で新たな客層を開拓するねらいがある。
菊正宗酒造は26日、神戸市で社長交代の記者会見を開いた。新社長の嘉納逸人(はやと)氏(42)は、嘉納家で代々受け継いできた「治郎右衛門(じろえもん)」を襲名した、と発表。「若年層や女性、海外の人に日本酒が注目されている。新商品を提供して需要を広げたい」と話した。
国内清酒大手10社に名を連ねる菊正宗の社長交代は32年ぶりだ。今月、同じく灘に蔵を持つ沢の鶴が33年ぶり、剣菱酒造も23年ぶりの社長交代を発表。いずれも40代だ。「時期が重なったのは偶然」(嘉納治郎右衛門氏)というが、3人とも甲南大時代からの顔見知りだ。灘の若手経営者の集まりでも交流があるという。
交代の背景には、市場環境の変化がある。国内清酒の2015年の販売量は、40年前の3分の1程度。だが13年に「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録され、海外での販売量は増えた。菊正宗の場合、海外販売は全体の売上高の3%だが、最近は前年比2割増の勢いで伸び、各社とも海外に注力する。これを機に「新しい発想の若い世代に託したい」(菊正宗の嘉納毅人〈たけと〉会長)というわけだ。
商品も若い世代を意識。菊正宗…