6月の世界選手権男子シングルスの表彰式。優勝した馬竜(左から2人目)、2位の樊振東(左)、3位の許昕(右)=ドイツ・デュッセルドルフ
卓球界で長らく1強状態を築く中国男子の足元が揺らいでいる。原因は、監督人事に端を発したとされるスター選手たちのボイコット騒動だ。
騒動は先月23日、自国開催のワールドツアー・中国オープンで起きた。世界ランク1位でリオデジャネイロ五輪のシングルスと団体の2冠を獲得した馬竜、同2位で今年の世界選手権シングルス準優勝の樊振東、同3位でリオ五輪団体金メダルの許昕がそろって棄権した。AFP通信や中国メディアによると、3選手は中国版ツイッターに「今はプレーする気になれない。(総監督を務めた)劉国梁がいなくて寂しい」とつぶやいたという。
劉国梁氏は中国の屋台骨を支えてきた功労者だ。1996年アトランタ五輪のシングルスなどを制し、現役引退後の2003年から男子代表監督に就任。中国代表の総監督も兼務し、選手からの信頼も厚かった。今春から総監督に専念して世界選手権にも同行した。
だが先月20日、中国卓球協会の副会長に就任することが突然発表された。指導の現場から退くことになり、選手たちが反発したとみられる。
国家ぐるみで幼い頃から選手を強化する中国で、スター選手によるボイコットは前代未聞だ。中国当局は「選手はいかなる時も愛国主義、集団主義を第一とするべきだ」などとし、卓球協会に処分を求めた。選手の抗議のツイッターも削除された。国際卓球連盟も「事態を深刻に受け止めている」との声明を出し、中国協会に調査を求めている。
現在開催中のオーストラリアオープンでも、中国男子チームは疲労を理由に出場を取り消した。現地メディアによると、3選手には厳罰が下される可能性があるという。世界トップに立つ中国選手がメジャーな大会から姿を消せば、水谷隼(木下グループ)、張本智和(エリートアカデミー)ら日本勢が勝つ可能性は高まるが、大会の質も下がりかねない。騒動の影響は広がりそうだ。