2020年東京五輪に開催国枠で出場が決まっているハンドボールの日本協会が人事を巡り、もめている。先月下旬の評議員会で役員改選をする予定が、蒲生晴明副会長兼専務理事と、協会と業務委託契約を結ぶ事務局長に対し、渡辺佳英会長がその場で解任動議を提出。役員改選は先送りされた。会長側は、両氏のガバナンスに不備があると問題視。事務局長は現在、出勤停止となっている。
関係者によると、解任動議の理由の一つには、副会長と事務局長が主導していた日本代表男子の強化試合中止の一件があるという。
協会は2月、日本男子のシグルドソン新監督の初陣として、ドイツの名門、THWキールと日本代表などとの強化試合を7月に大阪市、愛知県刈谷市、豊田市の3会場で行うと発表した。
ところが、その後、「スポンサーの関係で宿泊はヒルトンブランドのホテルで」や「移動は新幹線のグリーン車を」などと要求したキールとの条件交渉が折り合わず、途中から代理人を介さない形で、直接交渉することにした。その後、キールの再交渉の打診に協会は応じず、「最終通告」とキールが提示した交渉の機会にも対応しなかったという。協会は、強化試合中止を関係者に「キールの都合」と説明していた。招聘(しょうへい)予算は約3千万円だったが、キャンセルに伴い、数百万円に上る「強化」とは無縁の損失が発生した。関係者は「これ以外にも、両氏には複数のコンプライアンス違反がある」と話す。
事務局長は朝日新聞の取材に対し、「(損失は)理事会の正式な手続きを経て処理しており、瑕疵(かし)はない」と主張。蒲生副会長は「解任動議に法的根拠はない。今、騒いでいる人たちは役員を外れる人たち。あの時点で言わないと、新役員を決められて任期満了になっちゃうから騒いだ。これは反乱なんです」と話している。
一方、渡辺会長は3日、日本協会を通じて、「評議員会の件については対応していない」と回答した。
ハンドボールはリオデジャネイロ五輪で、日本勢が唯一出場できなかった競技だった。20年東京五輪に向け、日本協会は全国に約10万人いる中高生を含めた登録者から年間一律500円を強化費に充てている。
協会は8日に臨時理事会を開き、対応を協議する。