大東の試合を観戦する堀江善彦さん(右)ら倶楽部のメンバー=18日、島根県出雲市の県立浜山球場
島根大会に挑んでいる大東(雲南市)には頼もしい応援団がいる。保護者でもなく、野球部OBでもなく、勝手連的に集まったファンクラブだ。その名も「大東高校野球部ファン倶楽部」。甲子園出場経験があるわけでもないが、メンバーは県外にも広がる。
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18日にあった初戦の平田戦。大東側のスタンドには、チームカラーの紫の帽子と、地元の伝説ヤマタノオロチを背中にあしらったTシャツを着た「大東高校野球部ファン倶楽部」の人たち10人が集った。場所はスタンドの隅とやや控えめだが「力むなよ」「ああ惜しい!」と楽しそうに応援していた。試合は、エース川角亜久瑠(あぐる)君(3年)が得点を許さず八回コールド勝ちした。同校出身だが、野球部ではなかったという会社員永瀬雄貴さん(26)は「いい試合でした」と満足そう。
倶楽部を作ったのは旧大東町職員の堀江善彦さん(64)。大東OBだが、野球部員だったわけではない。高校3年の夏に母校の試合を初めて観戦。後に中日ドラゴンズなどで活躍した三沢淳投手を擁する江津(ごうつ)工に惜敗したが、必死で食い下がる同級生らの姿に胸を熱くした。社会人になってからも練習を見にグラウンドに足を運んだ。2013年、野球部と無関係でも応援したいと5人ほどで倶楽部をスタートさせた。
会員は徐々に増え、今では松江市を始め広島、大阪、名古屋など全国各地の50人以上が名を連ねている。卒業生でもなく、野球部の保護者でもないが、かつて大東町に住んだことがあるという理由で入ってくる人もいる。
会員をつなぐのは、堀江さんが書く観戦記だ。A4の紙いっぱいにスポーツ新聞のような豪快な見出しが躍る。堀江さんが深夜までかけて一人で書き、すぐ会員に郵送する。島根を訪れて試合を観戦できない人は、「次が楽しみ」と心待ちにする。試合結果も毎試合後にメールで速報している。
旧大東町はもともと自治会の草野球が盛んな土地柄。楽天の福山博之投手は同校出身。同校出身ではないが、阪神の糸原健斗選手(24)も大東のスポーツ少年団出身で、幼少期から知る子が大舞台で活躍するのも地元の大人たちが応援したくなる理由だ。
倶楽部では、スポーツ飲料を差し入れたり、冬の練習後には温かいぼたん鍋の炊き出しをしたりする。主将の新田徹央(てつひろ)君(3年)は「激励の言葉をもらう度に力になる」と話す。
倶楽部には鉄の掟(おきて)がある。強くても弱くても応援する――。堀江さんは「我々はあくまでファン。主役は子どもたちで、その姿に勇気をもらっているんです」。大東は22日、ベスト8をかけて3回戦に臨む。「見応えのある試合を期待しています」(市野塊)