自民党本部に入る安倍晋三首相=1日午前9時28分、東京・永田町、岩下毅撮影
自民党は1日、安倍晋三首相が提案した憲法9条に自衛隊を明記する改正原案の素案を今月下旬に示し、議論を再開する方針を決めた。だが政権の失速で公明党や日本維新の会からも改憲への慎重論が続出。自民内でも、教育無償化について反対論一色となるなど、首相が描く日程通りには運びそうにない。
自民党憲法改正推進本部の保岡興治本部長は1日、党本部で開かれた推進本部の全体会合で「今後の議論が効率よく的確にできるように整理したい」と述べ、党がまとめる改憲原案の素案を提示する考えを表明。次回全体会合の29日に、9条の1項、2項を残したまま、自衛隊を明記する首相提案に沿った条文案を示し、議論する考えだ。
首相は秋の臨時国会への改憲原案提出を明言。推進本部の事務局は1日付で、専従の党職員を置く部署に格上げした。9条、緊急事態条項、参院選の合区解消、教育無償化の議論がこの日で一巡。3日に行う党役員人事では、二階俊博幹事長と高村正彦副総裁の留任が固まった。二階氏には改憲議論の推進役、高村氏には公明との調整役を期待した布陣で、何とか原案提出にこぎつけたい考えだ。
しかし、東京都議選の自民党惨敗と内閣支持率の続落など安倍政権そのものが失速している。公明の山口那津男代表は改憲について「国民もついてきていない」と指摘。維新の松井一郎代表も「自民党の雰囲気を見極めないといけない」と語るなど、衆参3分の2で発議するための「改憲勢力」でも慎重論や様子見の姿勢が目立つようになってきた。
1日の自民党改憲推進本部の全体会合で議論した教育無償化については、首相に近い議員からも「法律で可能」といった反対論が相次ぎ、賛成意見はほとんど出なかった。もともと維新が強く主張した項目で、その協力を得るために自民が議論する4項目に含めたものだが、自民党の改憲原案に盛り込むのは困難な情勢だ。改憲勢力の間の溝もできつつある中、原案をまとめても、来年の発議につなげられる状況ではなくなりつつある。(藤原慎一)
■今後の主な政治日程
〈2017年〉
8月3日 内閣改造・自民党役員人事
29日 党憲法改正推進本部で9条改正素案提示し議論
10月22日 衆院青森4区、愛媛3区補選
臨時国会中 安倍晋三首相が表明した党改憲原案の提出期限
〈18年〉
1月 通常国会召集
9月30日 安倍首相の総裁任期満了
12月13日 衆院議員の任期満了
〈19年〉
夏 参院選
10月1日 消費増税(8%→10%)を予定
〈20年〉
7月~9月 東京五輪・パラリンピック