「特定複合観光施設区域整備推進会議」(IR推進会議)に臨む、議長の山内弘隆・一橋大院商学研究科教授(左から2人目)ら=31日午後4時30分、首相官邸、岩下毅撮影
政府の有識者会議が31日、カジノを含む統合型リゾート(IR)を国内で認めるための仕組みの素案をまとめた。根強いカジノ反対論を意識し、厳格な規制と地域経済の活性化をうたうが、効果を疑問視する声も出ている。
カジノ依存症対策、入場回数を制限 IR制度設計の素案
特集:統合型リゾート(IR)
カジノには、ルーレットやスロットマシンが設置され、多額のお金が飛び交う。依存症を招くだけでなく、資金洗浄(マネーロンダリング)など犯罪の温床になりかねない。こうした根強い批判を踏まえ、素案は「世界最高水準のカジノ規制」を掲げた。
日本人には入場料を課すほか、依存症患者や家族の申告により、入場を規制できるようにする。安易な借金を防ぐためにカジノ内での現金自動出入機(ATM)の設置を禁じ、事業者にはカジノ依存を防ぐための相談窓口の設置や情報提供を義務づける。1週間や1カ月あたりの入場回数の制限も打ち出したが、これは「日本独自の厳しい規制」だという。
ただ、わずか4カ月の議論では、入場料の金額や入場制限の回数など、肝心の中身に踏み込んでいない項目も目立つ。規制を厳しくすれば依存症を防ぐ効果は上がるが、カジノで期待される収益を上げられなくなるとの見方もあるためで、有識者会議で議長を務める山内弘隆・一橋大院教授は「事業が成り立たなくなっては元も子もない」と話す。
政府は秋の臨時国会に素案をもとにしたIR実施法案を提出する。これに向けて自治体やカジノ事業者らの意見をふまえ、具体的な中身を決めるという。競馬などの公営ギャンブルやパチンコなども含め、深刻な依存症への対策も取りまとめるとしており、重要な議論を先送りした形だ。
多重債務問題に詳しい三上理(おさむ)弁護士は「カジノの入場回数を規制しても、利用金額や滞在時間などを制限しなくては依存症対策としての意味は乏しい。公営ギャンブルやパチンコも含め、横断的な規制こそ進めるべきだ」と指摘する。
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