「颯」を訪れた常連客。ラーメン以外にもチャーシュー丼や鶏から揚げを注文した=ブータン・ティンプー、相場郁朗撮影
行列のできるラーメン店が「幸せの国」と呼ばれるブータンにある。ラーメンに魅せられたブータン人の店主と日本人の妻が開いた店だ。日本のソウルフードがヒマラヤの小国で愛され、にぎわっている。
首都ティンプーに昨年11月開業したブータン初にして唯一のラーメン店「颯(ハヤテ)」。店主ツェリンさん(39)が地元産のシイタケやショウガなどを煮詰めたスープを、器に注ぐ。茨城県出身の妻、桜井清香(さやか)さん(42)も笑顔で接客する。
一番人気はとんこつラーメン。見た目はこってりだが、「スープが濃すぎる」というブータン人の声を受け、あっさりしながら複雑でふくよかな味わいに仕上げた。タケノコなど地元の旬の食材を取り入れ、麺も自家製で勝負する。
店はオフィスやホテルが並ぶ一等地にあり、昼時は行列もできるようになった。女性客ヤンチェンさん(23)は「おいしくてやみつきです」。交際しているジャムヤンさん(27)と週1度の店通いを欠かさない。ジャムヤンさんはラーメンをすすりながら、チャーシュー丼もほお張っていた。「お酒を飲んだ後に、来たくなります」
店主のツェリンさんは、地元で観光ドライバーをしていたとき、ブータン旅行で訪れた清香さんと出会い、2009年に結婚して来日した。ラーメンのおいしさに心打たれ、茨城県内のいくつかの店で働き、専門学校でもラーメンづくりを学んだ。6年半の日本生活を経て、妻子3人とブータンに帰り、開店した。
ラーメンづくりに思いも寄らぬ…