空気清浄機、大疆(DJI)社製のドローン「御Mavic Mini」、鍾薛高のアイスバー、花西子のシルクパウダー入りプレストパウダー……国産品の品質が向上し続けていることを背景として、若い人にとっては「国産品」こそが「トレンド」で、国産品を買い、国産品を使い、国産品をSNSでシェアする若者がどんどん増えている。この1年間、動画サイト「bilibili」(ビリビリ)では9千万人のユーザーが国産品の動画を見ており、再生回数は累計で50億回に達した。
国産品の飛躍には、若い世代の新たな感情面での訴求、価値観の帰属先、コミュニティ・グループのアイデンティティも映し出されている。インターネットと一緒に成長してきた若者は品質と個性をより重視する。彼らの海外ブランドに対する態度は、かつてのような無条件の崇拝から現実的で理性的な態度へと変わった。
細分化した場面からレースに参入
ビリビリはこのほど初めて、「China-Z 100ランキング」を発表した。ビリビリのUP主とユーザーの評価、サイト内のデータ、30歳以下のネットユーザーを対象に行った消費の志向に関する調査研究などを踏まえて、中国の若者がデザイン・製作した国産品上位100種類を選出したものだ。
同ランキングには「誕生したばかりの国産品」が多く、誕生してすぐに先行者を追いかける役割を担う。たとえばアイスブランドの鍾薛高は、高級アイス分野に直接参入した。
瓦のような見た目、上部には「回」の字模様が刻まれ、限定品のパッケージには「縁起のよい雲の模様」や「干支」などの中国文化のモチーフがあしらわれている。鍾薛高の登場により、中国のアイス市場の構造が変化した。2018年、創業からわずか8ヶ月の鍾薛高は「ダブル11」(11月11日のネット通販イベント)に参加し、天猫(tmall)のアイス類の売上高で1位になった。販売開始からの42分間でアイスバー5万本を売り上げ、この日の売上高は400億元(1元は約16.0円)を超えた。単価が66元もする「エクアドル・ピンクダイヤ」シリーズ2万本が15時間で売り切れた。
国産アイスをこんな高い値段で売って、一体誰が買うというのだろうか。百度(バイドゥ)指数プラットフォームのデータによると、鍾薛高に注目する人のうち、52.72%は20代の若者で、主に一線都市と二線都市に分布し、ブランド側の位置づけと一致する。鍾薛高の関係責任者は、「当社のターゲットとするユーザーは主に2つのパターンに分類される。1つは25歳から30代の、高学歴で高収入のユーザー。もう1つは18-24歳の、珍しいものや新しいものが好きで、暮らしを愛するユーザーだ」と述べた。
国産品発展の背後に文化的記号
ここ数年に国産品が次々に打ち出してきた記号、イメージ、題材などをじっくりながめてみると、そこからはっきりとわかる特徴は伝統的な文化と審美眼の復興だ。たとえば縁起のよい雲の模様や繁体字などの文化的要素が文化の世界から飛び出し、情緒とファッション性がクロスオーバーで融合する現在のビジネス実践の中で、「トレンド」の概念を定義し直すとともに、「東洋の美学」に対する人々の憧れの気持ちを引き起こした。
この意味から言っても、中国伝統の要素を取り入れたおしゃれな国産品のトレンド「国潮」ブームは経済的現象でもあれば、文化的現象でもある。消費者のニーズの変化が国産品に新たな発展の可能性を切り開いたと言うなら、国産品の発展により消費者は改めて文化を追い求めるようになり、心の内なる文化への自信をかき立てられたといえる。阿里研究院が発表した「2020年中国消費ブランド発展報告」によれば、過去1年間に、中国人消費者のネット通販のショッピングカートに積み込まれた商品の8割以上が国産ブランドの商品だった。このように文化的な自信をもつようになったからこそ、国産品を買い、使用し、シェアすることが消費者の日常のライフスタイルになったのだという。
品質が国産品の人気を支える
杭州市で働く95後(1995年から1999年生まれ)の秦南臨さんは撮影するのが好きで、旅行中に見聞きしたことを記録にとどめ、仲間とシェアしている。最近撮影したビデオブログの画面は、ドローン「Mavic Mini2」かジンバルカメラ「Osmo」で撮影したものが大多数を占める。「一眼レフも持っていくが、使う頻度はこの2種類の製品にはるかに及ばない」という。
ドローンもジンバルカメラも大疆の製品で、China-Z 100にも選ばれたものだ。
大疆の関係責任者は、「以前なら旗艦機種だけに備わっていた機能が、今では入門機にも備わるようになった。航空撮影が好きだが価格には敏感な一部の若者にとって、こうしたコストパフォーマンスの高い製品が購入のハードルを大幅に引き下げ、人々とドローンとの距離を縮めた」と話した。
コストパフォーマンスについて言えば、小米も欠かせないブランドだ。
現在、世界最大の消費類のモノのインターネット(IoT)プラットフォームは米家であり、米家アプリに対応した人工知能(AI)とIoTの融合したAIoTデバイスは2億8千万台を超える。小米がスマートライフ事業として早くから手がけてきた製品で、このたびランキング入りした空気清浄機は、発売されると当時の業界の標準価格の3分の1というコストパフォーマンスの高さで、ユーザーに好評だった。
しかしコストパフォーマンスがブランドの唯一の切り札ではない。製品を理解する若者にとって、より重要なカギは製品の価値が価格に見合うかどうかだ。「細かくそろばんをはじく」ところと、「金遣いが荒い」ところと、この矛盾する要素が現在の若者の中で時に対立し、時に統一される。消費高度化でも消費のグレードダウンでも、若者の消費心理を正確に描写することは不可能で、「消費の分化」と言うのがより適切だ——こう考えると鍾薛高の人気もよりよく理解できる。
ブランドは若者と同じ波長で共振することが必要
インターネットでマーケティングが行われる時代には、「人気商品」を打ち出すのはもちろん大変なことだが、より難しいのはブランドのバージョンアップが加速する時代に、どうやってユーザーを引き寄せ、とどめておくかだ。「ネットの人気者」から「息の長い人気者」になるにはどうすればよいか。調査に答えたブランドには1つの共通認識がある。それはユーザーの参加ということだ。取材を受けたブランド側によると、若いユーザーには自分を表現したいという強い欲求があり、小紅書、微博(ウェイボー)、天猫、微信(WeChat)などのプラットフォームはブランドとユーザーのために豊富なコミュニケーションのチャンネルを提供しており、ユーザーを理解することはそれほど難しくない。カギは忍耐力をもって謙虚に耳を傾けられるかどうかだ。
鍾薛高の場合はこうだ。オンラインで流れを引き寄せ、オフラインの実店舗が鍾薛高ブランドとユーザーとの体験型相互交流の機能を担う。店舗ごとにさまざまなテーマの装飾をして、消費者に違った雰囲気を味わってもらう。特色あるテーマや話題性のあるポップアップ・ストアを打ち出して消費者に店に来て商品をチェックし、体験し、共有してもらい、情報を拡散してもらって伝達効果を狙う。
大疆もZ世代の消費の訴求に十分な関心を払う。関係責任者は、「この層は1995年から2010年までの間に生まれた若者で、生まれ育った家庭環境は全体として以前よりもよく、価値観を形成する重要な時期にモバイルインターネットとSNSがもたらしたボーナスを直接享受してきた。科学技術と知識を重視し、成長を渇望し、自己表現が得意で、世界とつながりたいと考えている」と話した。
China-Z 100ランキング発表会で、司会者は、「若者は暮らしの質を追求し好きなものに投資する。これが中国の商品の設計や研究開発にとって非常に大きな挑戦をつきつけている。Z世代の若者と共振できる商品でなければ、最終的に彼らが受け入れたいと思う商品にはならない」と話した。(人民網日本語版論説員)
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「人民網日本語版」2020年12月11日