東芝は20日、取締役会を開き、半導体子会社「東芝メモリ」の売却先について、米ファンドのベインキャピタルが率いる「日米韓連合」にすることを決議したと発表した。21日にも契約を結ぶ。売却額は2兆円を見込む。売却で、米国の原発事業の失敗で生じた債務超過を解消して経営再建の足がかりにする。
特集:東芝の巨額損失問題
東芝メモリのつくるNAND(ナンド)型フラッシュメモリーはスマートフォンや企業のデータセンターに使われ、需要の拡大が見込める成長分野。このため争奪戦が激しくなっていた。
買い手に決まった日米韓連合では、韓国の半導体大手SKハイニックスや米アップルも資金を出す。東芝も3500億円を出資し、売却後も東芝メモリの経営に関与する。ほかの日本企業とともに経営の議決権の過半は日本勢が握る見通しだ。
東芝メモリを巡っては、東芝と四日市工場(三重県四日市市)で協業する米半導体大手ウエスタンデジタル(WD)が、国際仲裁裁判所に第三者への売却差し止めを提訴。今後の結果によっては買収が白紙になりかねない。
もともと日米韓連合に参画し、東芝メモリの経営を主導するはずだった政府系ファンドの産業革新機構と日本政策投資銀行は買収当初は資金を出さない。訴訟の解決後に正式に出資する。訴訟リスクを嫌う機構と政投銀に配慮した「苦肉の策」だ。
一方、WDや米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)を中心とした「新日米連合」は19日になって、革新機構が拠出金を積み増す大幅な譲歩案を示して巻き返しを図った。だが、東芝メモリへの将来の経営関与を強めたいWDと、東芝は折り合えなかったもようだ。
WDは今後も売却に強く反対し、係争は続く見通し。買い手に同業のSKが含まれ、独占禁止法の審査が長期化するおそれもある。来年3月末までに売却益を得られず、東芝の債務超過が続いた場合、上場廃止になる見通しだ。
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〈東芝メモリ〉 東芝の半導体メモリー事業を分社化して4月1日に発足。従業員は約9千人。2018年3月期の売上高は1兆1639億円の見通し。スマートフォンの記憶媒体などに使われる半導体「NAND(ナンド)型フラッシュメモリー」の世界シェアは2位。3位の米ウエスタンデジタル(WD)と四日市工場(三重県四日市市)で共同生産し、首位の韓国サムスン電子を追う。