徳島県の有料老人ホームを母が出発するとき、職員たちが集まり見送ってくれた=山本雅彦さん写す
■両親の介護と仕事と認知症:4(マンスリーコラム)
父が認知症と診断されて数年が過ぎた2010年ごろ、母を説得して認知症の診断を受けさせることにした。
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父の異変、妻は気づいた 何度も同じ質問、道迷い帰れず
マンスリーコラム
当時の母は、もの忘れが目立つようにはなっていたが、特に生活に支障が出ているわけではなかった。毎日、炊事や洗濯もちゃんとこなしていた。一方でアルツハイマー病の治療薬「アリセプト」を服用している父の状態が安定していたので、母のことも早めに対処した方がいいだろうと思った。
兵庫県芦屋市にある、父が通う精神科に母を連れて行き、お決まりの認知症の診断テストをおこなった。
ところが母は立方体を描けず、指示された時刻の時計の針を正確に描写することもできなかった。母は動揺して「急にこんな問題を出されたら困るわ……」と、その場をとりつくろった。結局、ごく初期の認知症と診断され、父と同じアリセプトを処方された。
アリセプトは、服用し始めて最初の1週間ぐらい、人によっては頭痛が続くことがあるらしい。母も頭痛が起こり、数日後に服用をやめてしまった。どれくらいひどい頭痛だったのかはわからない。今後のことを考えて、いまは我慢した方がいいと説得したのだが、聞き入れてもらえなかった。
■「ヘルパーが盗んだ」
母は要支援1と認定されたので、ケアマネジャーと相談し、ヘルパーに週1回、家の掃除をしてもらうことにした。
やって来たヘルパーは50代後半の女性。人見知りの母も打ち解けて、私たちにヘルパーがいかに親切にしてくれるとか、人となりなどを上機嫌で聞かせてくれた。
ところが数カ月たったころ、突…