全員別々の女子校に通うWomen’s Innovationの4人。左から、徳山夏音さん、大山友理さん、中村舞さん、芦刈深紗さん(大山さん提供)
日本の女の子たちへ。女として生きていくのって、しんどいこともあるよね。「女性活躍」って言うけど、壁がいろいろあるらしい。でも「女の子だから」って言動や夢を制限するのはもったいない。固定観念を捨ててリーダーになろう。そんな女の子たちの話。
特集「Dear Girls」
「女性は法曹界に向いていない」。慶応大2年の山中実結(みゆ)さん(19)は昨年、男性教授がこう話すのを聞いてショックだった。
3歳から9年間、米国で過ごした。当時の夢は女性大統領になること。「実力があればルールは変わる」と信じていた。だが、日本に帰国後、「実力があってもどうにもならない現実を見た」。在籍する法学部でも、学生の約半数が女性なのに女性教授は極端に少ない。
女性の多くは、挑戦の前から道を断たれているのではないか。そう感じ、日米の女子学生らが昨年始めた日本の女子高校生向けのリーダー育成プログラム「LADY」の運営に携わる。多様な女性の生き方を紹介し、だれもがリーダーになれることを知ってもらう。
「『あなたはできる』というメッセージを、日本のすべての女子に伝えたい。自分が中学生、高校生だった頃に知っておきたかったことだから」という。
上場企業の役員に占める女性比率3・4%、女性の都道府県知事は6・4%……。日本社会には女性のリーダーをめぐる厳しい数字がある。世界経済フォーラムによる男女格差を示すジェンダーギャップ指数で、日本は昨年、144カ国中111位だった。
こうした現実は、若い世代の意識に影を落とす。ガールスカウト日本連盟が2014年、高校生の男女約400人に調査したところ、「リーダーシップをとりたい」男子は62・2%いたのに対し、女子は44・1%。性別を理由に「やりたいことができなかった」経験については、「まったくない」と答えた男子が37・8%だったのに対して、女子は24・8%だった。
危機感を抱いた全国の女子高校生約20人が8月、千葉県であったLADYの2泊3日の合宿に参加した。その一人、東京都内に住む高3の貫名優貴子さん(18)は「『私』である前に『女子』であるというプレッシャーを感じる」。将来、仕事を続けながら結婚、出産もしたいが、保育園不足や長時間労働など問題が山積するうえ、女としての気配りも求められている気がして、「やっていけるのか」と不安だった。
「99%の不安は杞憂(きゆう)に終わる。チャンスがあったらやってみて」。外資系金融会社の女性管理職の言葉で心が軽くなったという。今、自分にできることを積み上げていきたい、と思う。
■「女性輝く、言われても…」
現状を変えようと、行動を起こした高校生もいる。
「同世代と問題意識を共有し、自分たちで課題解決する気概を持ち続けたい」。8月末、埼玉県鴻巣市のコミュニティーFMで4人の女子高校生たちが思いを語った。都内の私立高3年の大山友理さん(17)が今春、同じ塾の友人と革新を生み出そうと立ち上げた団体「Women’s Innovation」のメンバーだ。
中3の時、父親が病気で倒れ、母親が就職先を探したが、看病や祖父母の介護と両立でき、家族を養うだけの収入を得られる仕事は見つからなかった。父親が10カ月後に復職するまで、不安な日々を過ごした。ちょうど政府が「すべての女性が輝く政策パッケージ」をとりまとめたころ。「『輝く』『活躍』といわれても、家庭の事情がある女性が満足に働ける状況にないと実感した」という。
また、「母の姿から専業主婦の危うさも痛感した」と振り返る。望んで専業主婦になる人はいいが、子どもが待機児童となって復職できず、専業主婦にならざるをえない人もいる。特に、昨年話題になったブログ「保育園落ちた日本死ね!!!」には衝撃を受けた。
4人はまず、女性をとりまく現状を知るため、女性の経営者や大学の学長、政治家らを訪ねてインタビュー。7月には「未来で働く女性のために今私たちが出来るコト」と題したイベントを開いた。今後は仲間を増やして政策提言などをしていきたい、と意気込む。
名古屋大教育学部付属高1年の大友志穂さん(15)は7月、名古屋大であった米国発のプレゼン型イベント「TEDx(テデックス)NagoyaU」に登壇した。
国連の親善大使で俳優のエマ・ワトソンさんが3年前に国連本部で「ジェンダーの平等」についてスピーチしたのをネットで見つけ、はっとしたのがきっかけだ。将来の自分にもかかわる問題なんだ――。
今春、10~50代の男女約50人に「夫は仕事をし、妻は家事をするのが望ましいと思うか」などのアンケートをし、一部の人に家庭内の異性と普段の役割を交換してもらった。参加者の半数以上は「男女平等について意識が高まった」と答えたという。「同世代に自分のことと考えてもらえるよう、発信し続けたい」という。