ロサンゼルス五輪の競泳女子200メートル平泳ぎで4位となった長崎宏子。モスクワ五輪時は小学6年で、代表に選ばれていた
東西冷戦下、ソ連のアフガニスタン侵攻への制裁措置として米国が提唱し、西側諸国がそろって出場を見送った1980年モスクワ五輪について、当時の日本代表の大半が現在でも「ボイコットはすべきではなかった」と考えていることが、日本スポーツ学会のアンケートで分かった。
同学会は回答を基にしたシンポジウムを10日に開催する。2020年東京五輪を前に日本スポーツ界の道しるべを探る考えだ。
モスクワ五輪の日本代表に選ばれたのは19競技、178人。うち死亡者を除いて所在の判明した92人にアンケートを送付。9月末現在で49人から回答を得た。それによると「ボイコットすべきではなかった」と答えたのは8割を超える40人。また、半数強の27人が「ボイコットはその後の日本スポーツ界に悪影響を及ぼした」とした。
当時は男子だけだったレスリング代表は「長年努力してやっとつかんだ五輪切符が大きな力ではぎ取られた。怒りの矛先を向けるところもなく、絶望して引退した」と明記。競泳の女子代表は「思い出して、苦しい思いをしている人もいると思う。私も出来れば思い出したくない。でも、その時の思いを忘れずに次世代に伝えることが、今後の五輪のあり方にメッセージを残せる」とつづった。
アンケートをまとめた同会の長田渚左代表理事は「来年2月の平昌冬季五輪にも北朝鮮の動向を不安視するフランスの不参加の可能性が伝えられている。モスクワ五輪の体験は37年前だが、今に通じる話だ。五輪そのものが政治であるとは言えるが、スポーツと政治がお互いに尊重し合っていかないと、五輪も存続出来ないのではないか、と思う」と話す。
シンポジウムは、当時の馬術代表だった竹田恒和・日本オリンピック委員会会長ら6人をパネリストに東京都文京区の筑波大東京キャンパス文京校舎で。19時開始、参加費1千円で定員200人。問い合わせはスポーツネットワークジャパン(電話03・3323・0893)へ。(竹園隆浩)