日産自動車の販売店では、2日発売の電気自動車の新型「リーフ」を大々的にPRし、販売攻勢をかけようとしていた矢先だった
日産自動車が無資格の従業員に新車の検査をさせていた問題で、結果を記す書類には実際に検査に関わっていない有資格者の名前が示され、押印もあったことがわかった。こうした偽装はほぼ全ての工場で行われていた。国土交通省は3日、一部工場への立ち入り検査を実施。不正への組織的な関与の有無など、詳しく調べる。
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日産では、資格を持たない補助検査員による検査が、国内向けに車両を組み立てる全国の工場で日常的に行われていた。検査の結果や誰が検査したかは書類に残す必要があるが、関係者によると、有資格者が実施したように押印などで記載内容が偽装されていた。
同省は検査に不備がないか定期的に監査しているが、有資格者の責任で作成されたことを示す押印がある書類自体が偽装された場合、不正を見抜くことは難しい。同省関係者は「不正が発覚しないよう、意図的に書類を偽装したのであれば大きな問題」と話す。
同省は3日、栃木と京都の工場に抜き打ちで立ち入り検査に入った。関係書類の提出を求めるとともに、従業員からの事情聴取にも着手。今後、不正の実態解明を進める。
完成検査は、工場で車の生産時に、ブレーキの利き具合やライトの点灯などを最終的にチェックするもの。検査をパスしなければ出荷はできない。道路運送車両法などに基づき、各社が厳格に認定した「検査員」が実施することで安全性を担保する制度だ。
西川(さいかわ)広人社長は2日の記者会見で「(不正を)全く認識していなかった」と経営幹部の関与を否定したうえで、社内で制度の重要性が「十分に認識されていなかった」ことが背景との認識を示していた。石井啓一国交相は3日の会見で「使用者に不安を与え、制度の根幹をゆるがすことできわめて遺憾。厳正に対処する」と話した。(伊藤嘉孝、青山直篤 青山直篤)
■国交省、他社にも報告要求
日本の「ものづくり」の先頭集団にいるはずの日産自動車で、無資格者が書類上は資格者を装い、検査の実態を偽る慣行が続いていた可能性が強まった。生産性を競うあまり、安全確保の認識が甘くなっていた可能性がある。同様の事態がないか、他社も確認を急ぐ。
メーカーは車の完成段階で、国の手続きを代行する形で「完成検査」に当たる。各社で認めた検査員が担当するのが決まりだ。日産は資格を与えた「完成検査員」だけでなく、現場でサポートする立場の無資格の「補助検査員」に完成検査の一部を担当させていた。
西川広人社長は2日の会見で、…